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映画におけるチェロの曲(1)『ポンヌフの恋人』 [あ行]

映画に使われたチェロの曲で好きなものや、
有名だったり良い曲だったりする作品を、
独断と偏見でリストアップするつもりであると、以前このブログに書いた。

映画クリップと、もとのチェロ曲と、両方の動画を貼ることになるので、
必然的にリストアップすると、とてつもなく長くなりそう。
そこで、ちまちまと一作品ずつ、合間合間にアップすることにします。

The Lovers on the Bridge / Les amants du Pont-Neuf (1991) - Metro Cello scene

https://youtu.be/Yz-L7zXW16o

1991年のフランス映画『ポンヌフの恋人』には、
印象的なシーンがいくつもある。
炎が出てくる場面が、いずれも飛びぬけて秀逸だった記憶があるんですが、
それ以外ではこのチェロのシーンが、印象的なシーンのかなり上位に食いこんだ。

チェロ弾きとの恋愛で失恋し、おまけに失明しかけでどんどん症状も悪化して希望を失い、
浮浪者になって、ポンヌフ橋で寝起きしている画学生(ジュリエット・ビノシュ)が、
聞き覚えのあるチェロの旋律に反応するシーン。

ほんと今なら「設定盛りすぎ」と言われかねない物語性の高さにもかかわらず、
薄っぺらい嘘くささがない。強烈だが美しいシーンがちりばめられていて、
リアル感のある、胸に迫る人間ドラマが繰り広げられて、
ジュリエット・ビノシュは役になり切るため、自分の前歯を削って挑んだことでも有名でした。

当時、私はビデオレンタルで視聴した。
この動画のシーンは、もう幾度となく巻き戻し、
返却までにテープが擦り切れそうになるほど、見た(……いろいろと死語)。

今、このブログを書いていて突如、唐突に思い当たったのだが、
“極東での若き日々”(「小説すばる 2014年4月号」掲載)
この私の短編で、
某国のスパイとおぼしきアドーリフ・ガフィオが、
極東日本の街角でヴァイオリンを弾いている青年・尚夜(なおや)の、
そのヴァイオリンの音色を追いかけて、たどりあてるシーン。
あれは、ひょっとしたら脳裏のどこかに10代の時に見たこの映画のシーンが、
こびりついていたせいだったのやもしれないなあ、と。

この映画はまったく念頭になく、一ミリも思い浮かべて書いてはいない。
これとは全然違う光景、まったく異なる人間関係を想定して描かれてあるが、
弦楽器の音が聞こえてきて、ハッと反応するのは、まさにこういう感じじゃあ……。

尚、このコダーイのチェロソナタをコンサートで生で聞いたことがあるんですが、
実際はかんなり長い曲です。どこで区切るかにもよるが。
無伴奏で、効果音なのか音楽なのかといった様相を呈し、
『ポンヌフの恋人』で使われていたのは冒頭と、ごく一部の抜粋、その寄せ集めなのだった。

この曲は一体どこに向かってるんだろ……と、集中力も途切れてきて、
ただ聞くだけですら難易度が高すぎて、すごく疲れた記憶がある。
それでも映画で使われていた部分になると、
おおっ! 
と昂揚した。

あまりにも長いから、
Youtubeでは、たまに途切れとぎれに聞くことはあっても、
全部通して聞ききったことは一度もないんだ……。

Zoltán Kodály Solo Sonata, Jakob Koranyi - Cello

https://youtu.be/tDyUCK7K0mE

映画に使われている部分は、この動画だと、
冒頭1分と、26:06~27:47にあたりますね。



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