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意外と知っている曲(チェロ) [最近のお気に入り]

趣味でチェロを習っているのだが、
チェロを習っていて、チェロがけっこう好き~(楽器自体も、チェロ音楽もチェロの音色も)
ということを話題にすると、
──チェロってどんな曲があるの?
──何を弾くの?
……みたいな話題に当然なっていく。たいていうまく説明できない。
曲名自体が通じにくい。

チェロという楽器を知らない人に会ったことはない。まず居ないですよね。
『セロ弾きのゴーシュ』という童話を宮沢賢治が書いているくらい、
相当、昔から日本でもなじみ深い、知名度満点の楽器である。
そのいっぽうで、
チェロの曲ってとくに知らない……
というリアクションをする人が少なくはない。

で、「えと、こういう曲とかが……」と説明をしようとするも、
わたしの歌う謎メロディー、
らーらーらー らーらーらー ちゃーララー
(ちなみにこれはサン・サーンスの『白鳥』のつもりである)
とかで、まずもってスムーズには通じないのだった。
だから私も心が折れる手前で、すんなり諦める。

だって単純に相手をますます困惑させるいっぽうですし、
わたしの微妙に恥ずかしい空回り具合も、次第にいたたなまれなくなってきますし、
話もどこにも進みようがない。あ、これ誰も得しないやつじゃん?

でも今の時代、有難いことにYoutubeたるものが、ある!
しかも全世界、各国の名だたるチェリストが自ら公式に、
あるいは所属レコードレーベルなどを介して公式に、
ばんっばんライヴやコンサートなどをアップしているのだ。
贅沢!

同じお馴染みの曲であっても、
本当に驚くほどテンポや曲のインタープリテーションがみんな違っていたりする。
それらを聞き比べながら、
……これが良い~
……この曲はこの人の、ここの部分がすごい好み~
とかやってると、本当にあっという間に時間が過ぎていきます。ええ。
ニコニコ動画となんら変わらん。

というわけで、
チェロの有名な曲、
……みんな実は知っている──曲名と曲が結びついていないだけで、まず一度は聞いたことがある、
……発表会では、これらの曲を弾けるようになりたくて、皆、がんばるのだという人気曲、
……圧倒的難易度だが、チェロの音色、チェロという楽器をこうも弾きこなすチェリストに乾杯!
みたいな名曲を、私が独断と偏見で選んで、リストアップしておきます。
厳選です。

共通言語として、これらの曲が通じると大変、嬉しいし、
超有名なだけあって、老若男女、人種や民族を問わず誰にとっても響く曲が多いはずだから、
皆さん、聞いてみてほしい。
ちなみに私が現時点で弾けるのは、この中ではサン・サーンスの『白鳥』だけです。

いつか近いうちに必ず弾けるようになりたい曲もあれば、
なんらかの諸事情……吸血鬼になるなどして、不老長寿にでもならぬかぎり、
今のままでは、おそらく一生弾けるようにはならないのでは……?
という曲もある。

なお、超ざっくりな基礎知識として。
チェロは、F字孔寄り(正確には駒寄りというか……)で弦を押さえるほどに、
音がとりにくく、弾きにくくなります。
F字孔寄りの弦を多く押さえなくてはならない曲ほど、
概して「難易度高め」になります。

また、重音(複数の弦を同時に押さえる。ピアノで言う和音のような……)は難しい。
単純にいって、複数の弦を同時に押さえ、その複数の弦を同時に弓で均等にかき鳴らすのは、
力がより必要になりますし。
かといい力わざだけでは音が割れるし、
複数の音の音程が、わずかずれるだけで顕著に気持ちの悪い響きになりかねないので、
重音につぐ重音といった曲は、「難易度が超高い」です。

サン・サーンス『白鳥』

https://youtu.be/3qrKjywjo7Q
Yo-Yo Ma, Kathryn Stott - The Swan (Saint-Saëns)
ヨーヨーマ演奏。
馥郁とした音色というのは、まさにこういうチェロ。

フォーレ『夢のあとに』

https://youtu.be/WqY3yyckcvI
FAURÉ "Après un rêve" - Maxime GRIZARD - 1er prix de violoncelle 10-13 ans FLAME (et Prodige 2017)

子供用のチェロ(?)で、
パイプ椅子に腰かけて、半ズボンで、
(チェロって、太ももで楽器のとんがってる部分とかを押さえて弾くんで、生足だと絶対に跡がつく)
立派に弾いちゃうのか君は、である。

なお私が、フォーレ『夢のあとに』を初めて聞いたのは、
『北の国から’95 秘密』でした。

蛍がすごい年上の医者(妻子持ち)と不倫して、雪深い寒村にかけおちして、
その時のことを打ち明けるときに、この曲が流れるんですよね。
「すっごく評判の悪い先生……でもチェロを弾くのよ……」とか言ってね。
燃え盛る暖炉の前に、たしかチェロが置いてある回想で、この曲が流れる。

自分の息子よりも若いような看護婦(蛍)に手を出し、妻子を捨てて駆け落ちして、
無医村まで落ちのびてきて、貴重な医者なのに「評判の悪い先生」であると称されるという、
まあ、ろくでもない身持ちの悪い奴に決まっているのだが。

ここで、この曲が流れつつの「チェロを弾くのよ……」
で、とたんに見どころのある男に思えてしまう魔法。

きっと誤解されがちだけど、蛍が、申し分のない彼氏(緒方直人)を捨て、
倫理観をも捨てて駆けおちしちゃう、
そんな魅力を兼ね備えた男に違いないのだ……
だって、より雪深い場所へと若い看護婦と駆けおちするのに、
チェロ一つを大事に抱えて逃げるんだぜ……
と、むりやり視聴者を納得させてしまうのは、全てこの曲の力なのであった。
(その医者とやらが実際に登場するシーンは、ついぞないのだから、なおのこと。)

同じ『夢のあとに』を、こちらのチェリストの演奏でも、どうぞ。


https://youtu.be/Xdjosc8HIhI
Sheku Kanneh-Mason - Fauré: Après un rêve for cello & piano

こちらのチェリストは英国のロイヤルウェディングで演奏して、一躍、世界的に有名に。
チェロ界隈では無論その前から注目されていた実力の持ち主。
前述の少年がなにしろ、もろ少年なんで、一方こちらはすごい大人に見えますが、
彼は1999年生まれなので、相当に若手です。

ラフマニノフ『ヴォカリーズ』

https://youtu.be/PGIZfsKvKgU
S. Rachmaninov - «Vocalise». Narek Hakhnazaryan

この曲は通して聴くと、
後半の曲の締めかた(この動画だと4:16~あたりから)が、
いわゆる「エモい」旋律です。

次も同じくヴォカリーズですが、こちらは電子チェロでの演奏。


https://youtu.be/SVyza9jzw18
Luka Sulic - Rachmaninov Vocalise

ヴォカリーズについては、こちらの演奏が電子チェロにもかかわらず、
私は一番好きかもしれない。
とてもエモい。
「エモい」といういい方は本来あまり好きではないんだが、
この曲の場合、とくに後半が本当にとてもエモい。
(むろんチェロの先生は、エモいなどという言葉は一言も絶対に発しない)

弾いているチェリストは、皆さん御存知、有名な2CELLOSのうちの一人。

ポッパー『コンチェルト・ポロネーズ 作品14』

https://youtu.be/Fk6zQvjzli0
Nana - ポッパー:コンチェルト・ポロネーズ 作品14(ライヴ)

演奏しているNanaは欧陽菲菲(Love is Overの歌手)の姪っ子です。

華やかで情熱的でみずみずしく、アップテンポで切れのある弾きかたなのが、好きです。
山場部分で映像が終わるので、切れないVer.はこちら→https://youtu.be/3LXZfWMtorM

フォーレ『エレジー』

https://youtu.be/5kpPq0ITOs0
Luka Sulic - Elegy (Fauré)

ドラマチック。
こちら演奏者は前述の、大人気・2CELLOSの一人のわけですが、
2CELLOSってさ、パフォーマンスの派手さばかりが前に出て、
正直、あんまり好きではないというかさ、(カッコいいだけじゃん、かっこいいけどな!)
……大体、弓をぼっさぼさにしたまま、
いかに激しく弾いて弓毛を切ったかを競うようなのって、結構ありえないんですけど。
……と思うところも、なくはなかったのだが。

彼の正統派のこのチェロの演奏を聴いて、一気に悔い改めた。心の中で土下座した。

サラサーテ『ツィゴイネルワイゼン』

https://youtu.be/eBPIXiBTjDM
Luka Sulic - Gypsy Airs (Concert for Japan)

従来、ヴァイオリンで演奏される曲。
ヴァイオリンだとむっちゃくちゃ高音で、時に奥歯が痛くなりそうなほどキンキンな演奏もあるため、
個人的にチェロだと、すみずみまでじっくり聴きこめる気がします。
骨太で、懐が深い響きに。

後半になるにつれて、カメラワークが本当に最悪で
(なんで演奏の山場の超絶技巧で、伴奏や観客ばっかり撮ってるの)
(20秒ごとにカメラを切り替えないと死ぬの?)
スケートで例えるなら、4回転ジャンプの着地の瞬間や、
ストレートラインステップの最中に、観客と解説者ばっかり撮ってるようなもんで。
Youtube上でも、英語で書かれた苦情が世界各国から、ものすごい。
演奏が素晴らしいだけに、悔やまれる。
(なおこちらは、日本の311の震災の折に、日本のために催されたコンサートのようです。)

ジャゾット『アルビノーニのアダージオ』

https://youtu.be/kn1gcjuhlhg
HAUSER - Adagio (Albinoni)

弾いている人は、2CELLOSのうちの、前述とは別の、もう一人のほうです。
2CELLOSってさー(中略)
なんだかんだで(中略)
この正統派のチェロの、渾身の演奏を聴いて、
心の中でただただ、ひれ伏した。表現力が圧倒的。

この曲はクラシカルな系譜にあるものの、実際のところ発表されたのは1958年と、
第二次大戦後。
この手の音楽にしては、新しい曲のうちに入るのでは。

もう少しリストアップしたい曲があるのだが、
長くなりすぎるので今回はひとまずこのあたりで。

いずれ、洋画で印象的に使われていたチェロの名曲もいくつか、
リストアップしたいと思っています。


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