誤字発見しました ○pœnis ← ×poœnis [ニュース]
いま第2回アガサ・クリスティー賞受賞作『カンパニュラの銀翼』の英訳原稿を、
せっせと英訳チェックしています。
訳者Matt Treyvaud氏の美しい英訳文は、細やかなごまかしのない文章で、
原文のニュアンスを一分も損なわず訳すことに専念しているのが伝わります。
(この訳者は夏目漱石作品や、萩尾望都作品を英訳しているそうです。)
ここは英語でこう言うのかあ、ほんとこの表現ぴったりだ……等々
わたしは、じっくり読みこみながら、しみじみしたり、感心したり、
知らない語彙に続々と出会ったりしています。
いっぽうで、訳者の文間までも読み取って訳する能力に長けているせいゆえか、
解釈の相違、先入観ゆえの誤訳?
と、おぼしき部分もちょくちょく散見され、わたしは赤ペンを入れていきます。
おっと、ほおお、とか興味深く、読んでいる最中です。
また単純な意味の取り違えや、ニュアンスの解釈のふり幅が異なるとか、明らかな誤訳、
などにとどまらず、
けっして間違ってはいない、ただし作者のわたしからすると違う、これを意図していたのではない、
という箇所も出てきます。
たとえば、鏡台。
――クリスティンが鏡台の抽斗(ひきだし)にしまっておいた、
小鳥の剝製の小箱を取り出すシーン。
鏡台をmirror standと訳してあって、言語上、間違いではありません。
でも、ミラースタンドっていうと一般的にこういうの(画像)です。
いっぽう私が思い描いていたクリスティンの鏡台は、ドレッサーです。
上記のようなミラースタンドとは違うわけです。
なんでドレッサーという単語が使われていないんだろうか……。
調べると、イギリス英語ではドレッサーといえば食器棚を指すらしい。
アメリカではドレッサー=化粧台だと通じますが、
お話の舞台は英国ですから、ドレッサーじゃ駄目なわけです。
ではイギリス英語でわたしが思い描く、鏡つき化粧台は……というと、
dressing table (画像)になります。
そういった箇所も、手を入れていきます。
そんなこんなで読み進めていたら、原書のほうにミスを発見。
つまり わたしが書いた原文が 間違っている!
おおお(泣)
急ぎここで訂正いたします。
ラテン語が間違っています。
===========
(誤)poœnisと書いてますが、これ間違いです。
(正)pœnis
oが一ツいりません。
===========
うああああ。
pœnisは英語だとpainが派生語。
意味は英語だとpenalty、punishment、(figurative) executionとなり、
わたしは作中において《咎》と訳している単語です。
あとまたラテン語で
===========
(誤)deoreleonis
(正)de ore leonis
正しくは途中で二ヶ所、スペースがあきます。一つの単語ではない……。
===========
『カンパニュラの銀翼』に目立った誤字は無いと思っていたのに、面目ないです。
(……細かいところ、このルビは前に出てきた時点でも、ふっておけば良かったなあ、
などと気に掛かる些末な箇所はありますが、別に間違いという程のものではなかった。)
今回、気付いた箇所はラテン語で、ひょっとしたらバレない箇所だったかもしれません。
これまで読者のどなたからも指摘を受けたことはなく、
(むろん優しい読者が目を瞑ってくれた可能性は大いにある)
また校正もスルーだったわけですから、
しかし知った以上は言わないと気が済みませんでした。
ラテン語が得意なはずのあの登場人物が、スペルミスしてたなんて困る。
de ore leonisに関しては、筆記体の綴り字がつながってdeoreleonisと読めたとも解釈できるが、
pœnisに関しては言い逃れが難しい。
お目汚しで、すみません。
原書を修正する機会に恵まれましたら(増刷が出たりする機会があるならば)
その時に、必ず修正いたします。
……ショックでしたが、気付いてよかった。
英訳をチェックする機会がなければ、たぶん一生気づけませんでした。
せっせと英訳チェックしています。
訳者Matt Treyvaud氏の美しい英訳文は、細やかなごまかしのない文章で、
原文のニュアンスを一分も損なわず訳すことに専念しているのが伝わります。
(この訳者は夏目漱石作品や、萩尾望都作品を英訳しているそうです。)
ここは英語でこう言うのかあ、ほんとこの表現ぴったりだ……等々
わたしは、じっくり読みこみながら、しみじみしたり、感心したり、
知らない語彙に続々と出会ったりしています。
いっぽうで、訳者の文間までも読み取って訳する能力に長けているせいゆえか、
解釈の相違、先入観ゆえの誤訳?
と、おぼしき部分もちょくちょく散見され、わたしは赤ペンを入れていきます。
おっと、ほおお、とか興味深く、読んでいる最中です。
また単純な意味の取り違えや、ニュアンスの解釈のふり幅が異なるとか、明らかな誤訳、
などにとどまらず、
けっして間違ってはいない、ただし作者のわたしからすると違う、これを意図していたのではない、
という箇所も出てきます。
たとえば、鏡台。
――クリスティンが鏡台の抽斗(ひきだし)にしまっておいた、
小鳥の剝製の小箱を取り出すシーン。
鏡台をmirror standと訳してあって、言語上、間違いではありません。
でも、ミラースタンドっていうと一般的にこういうの(画像)です。
いっぽう私が思い描いていたクリスティンの鏡台は、ドレッサーです。
上記のようなミラースタンドとは違うわけです。
なんでドレッサーという単語が使われていないんだろうか……。
調べると、イギリス英語ではドレッサーといえば食器棚を指すらしい。
アメリカではドレッサー=化粧台だと通じますが、
お話の舞台は英国ですから、ドレッサーじゃ駄目なわけです。
ではイギリス英語でわたしが思い描く、鏡つき化粧台は……というと、
dressing table (画像)になります。
そういった箇所も、手を入れていきます。
そんなこんなで読み進めていたら、原書のほうにミスを発見。
つまり わたしが書いた原文が 間違っている!
おおお(泣)
急ぎここで訂正いたします。
ラテン語が間違っています。
===========
(誤)poœnisと書いてますが、これ間違いです。
(正)pœnis
oが一ツいりません。
===========
うああああ。
pœnisは英語だとpainが派生語。
意味は英語だとpenalty、punishment、(figurative) executionとなり、
わたしは作中において《咎》と訳している単語です。
あとまたラテン語で
===========
(誤)deoreleonis
(正)de ore leonis
正しくは途中で二ヶ所、スペースがあきます。一つの単語ではない……。
===========
『カンパニュラの銀翼』に目立った誤字は無いと思っていたのに、面目ないです。
(……細かいところ、このルビは前に出てきた時点でも、ふっておけば良かったなあ、
などと気に掛かる些末な箇所はありますが、別に間違いという程のものではなかった。)
今回、気付いた箇所はラテン語で、ひょっとしたらバレない箇所だったかもしれません。
これまで読者のどなたからも指摘を受けたことはなく、
(むろん優しい読者が目を瞑ってくれた可能性は大いにある)
また校正もスルーだったわけですから、
しかし知った以上は言わないと気が済みませんでした。
ラテン語が得意なはずのあの登場人物が、スペルミスしてたなんて困る。
de ore leonisに関しては、筆記体の綴り字がつながってdeoreleonisと読めたとも解釈できるが、
pœnisに関しては言い逃れが難しい。
お目汚しで、すみません。
原書を修正する機会に恵まれましたら(増刷が出たりする機会があるならば)
その時に、必ず修正いたします。
……ショックでしたが、気付いてよかった。
英訳をチェックする機会がなければ、たぶん一生気づけませんでした。
2014-12-08 14:23