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殺人の質と量 [さ行]

アイルランドは正しいと思えることを毅然として言ってのける立派な国なのだった。


https://twitter.com/i/status/1747616414603854071

1分10秒の動画の中で、Butcher Bidenと2度呼んでいる。アイルランド、強い。

イギリスと長きにわたって紛争をしてきたからこそなのだろうし、そこから歩み寄って英国と折り合いをつけて和平路線で友好関係を築きだした歴史も、そもそもすごいわけなんだけれど、ハリウッド映画では政治的背景を排除したアイルランド人描写というと、桁外れに貧乏、あるいは飲んだくれが圧倒的に多いという……。

けれど、いざという場面では、弾圧と飢饉を乗り越えてきた根性が、長いもの(大国アメリカ)に巻かれて迎合しようぜなんて日和見主義ではないってところを、ガツンと現在進行形で見せつけるんですね。見上げた奴だ……。

アイルランドというと、ともかく悲惨で不遇な目に遭ってきた歴史的イメージがつきまとうが、唯一アイルランドのわかりやすいラッキーポイントがあるとするなら、第二次大戦を経験せずにしのげた点(中立の立場を取って参戦しなかった)、これはアイルランドの体力──人材とか資源とかもろもろの温存にすこぶる貢献したよなあ……と思ったりします。

それにしてもアメリカのバイデン大統領をこう呼べる西側の国って、本当にアイルランド、年季が違うというか、バイデン大統領はルーツがアイルランドにあるらしく、だからこそ「我々アイルランド人をお前と一緒にされては迷惑。その口で二度とアイルランドの名を出すな」と明言しているのが痛烈。

なおこちらの翻訳のかたはButcher Bidenを上の動画のように訳されているわけですが、本来、人殺しはmurderer とかkillerなわけで、そんな生易しい程度の人殺しではないのが、原文の英語では、より伝わってきますし、それでも訳者の方がこのように訳したのもまたわかります。
おそらく……(というか十中八九、間違いなく)直訳すると、日本では職業差別的な表現として引っかかる。

英語圏は日本のような穢れの文化の背景がほぼないので、「Butcher」の意味合いは、
殺す相手を人間とも思っていない、相手を家畜のように殺す奴──
というニュアンス。
家畜を殺すのなんて生きていくうえで当然で、そんな日常的に人殺しをする、人殺しのカジュアルさを強調しているというか。家畜を解体すること自体は別に問題ない(日本だって養殖マグロの解体に差別的な意味合いは皆無だし、むしろマグロの解体ショーを見に行っちゃうくらいでしょ)、その仕事内容自体に残虐性や穢れのイメージはつきまとってはないと思ってよいかと。

かつて「コンチェルト・ダスト」の原稿段階で、私は「屠〇場」と表現したことが有るんですが(屋敷内は〇殺場と化してきていた)、校正の時にその表現を改めるように指摘され、なるほど変えなくてはいけない日本における根強い「固定観念」もわかったので、
「屋敷内は一斉駆除の土壇場と化してきた」
と、書き換えた覚えがあります。

Butcher……並の殺しには使わない。殺人の質や量のはなはだしさ、むごたらしさを強調する痛烈な表現なので、「惨殺者」「殺戮者」「冷血大量殺人の主犯」といったニュアンスですよね……。

英語でのオリジナルの動画はこちら↓
https://twitter.com/ClareDalyMEP/status/1747323130060697682
発言者は欧州議会のメンバーClare Daly(アイルランド・ダブリン出身)です。