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オーディオブック挑戦中『黒猫ギムナジウム』 [黒十字療養所出版部]

オーディオブックを自分一人で作ってみようと、ちょっと無謀にも思ったのだ。

2012年に講談社BOXで初版が刊行されて、現在、売り切れ絶版となっている『黒猫ギムナジウム』を、今年中に少部数、自分で刷って復刻版として刊行するにあたり、購入してくれる人への特典・おまけとして、オーディオブックを無料でつけたりできたらいいな、と。

刊行する本の巻末にパスワードを記しておいて、そのパスワードを入力すれば、希望者は無料でダウンロードできる。欲しくない人はダウンロードしないというの無論ありで、とか。
オーディオブックはあくまで無料で配布するのだが、オーディオブックが紙の本の営業妨害になっては悲しいので、本購入後に入手してもらう形で、工夫したいなと。

私はYoutubeとかの動画を見ていても「視聴より読んだほうが手っ取り早いじゃん」と思うタイプではあるのだが、眼精疲労などから文字を読むのが億劫なときはある。
なぜか目線が字面を上滑りするばかりで、中身が頭に入ってこないときもある……。
電子書籍の小説は概してそう。

漫画は電子書籍で問題なく読めるので、最近ではもっぱら電子版を臆せず購入する。作品にもよるが。
小説本は電子書籍になると、本当に上滑りするばかりで内容が半分も頭に入っていかない気がする。小説本は絶対に紙派!

いろんな環境でも入手できるよう、電子書籍も媒体の一種としてむろん必要ではある。
(耳の不調とか、音を出せない環境下では、紙の本がないならば電子書籍が必須になる。)

ただ、単純に紙だとダメな事情があるだけの場合は、小説はいっそ電子版よりオーディオブックのほうが良い。

漫画は文字を読むだけじゃ伝わらないが、小説は文字を読むだけで伝わるように書いているのだから、オーディオブックはむしろ非常に好ましい、小説にぴったりな電子版としてのありかたではないか?
と。

幼稚園の頃、わたしは2月は1日も通園できなかったりしました。
単純にまあ冬で……子供だからごく一般的な風邪を引き、扁桃腺がくわーッと腫れて高熱が出て、その後、延々と長引く咳、というのがお決まりのコースでして。
幼稚園でとんだり跳ねたりお遊戯するほど元気ではない、体力が落ちたところにぶりかえすといけない、という状態なのだが、家でぬくぬくしている分には、少なくとも精神的にはけっこう元気で暇なんです。

通園はできないだけで、その間、大好きなぬいぐるみを抱っこしながら、布団の中で、童話読み聞かせのカセットをとにかく聞いていました。
日本の童話シリーズは黄色の本の形をしたパッケージ。西洋の童話シリーズは青色の本の形をしたパッケージだった。
カセットテープがそれぞれ6本くらいずつ入っていて、A面とB面で違う話が収録されていました。

今でも覚えているのが、
「あーんあん。あーんあん。うりひめこののるカゴに、あまんじゃくがのっている。あーん……あん」
というフレーズです。
オーディオブックは思えば昔っから馴染みがある。
媒体がカセットテープから変わっただけではないか、と。

昨今、大人が楽しめるオーディオブックといえば超有名声優が朗読をしており、ほんとうに羨ましいかぎりで、当然、購入者側目線になると本の単価としては高額ともいえる。
好きな声優が一冊まるまる読んでくれるとすれば、それを高額と感じるかというと別の話だが。
いずれにせよ、一個人としての私が手配できる代物ではない。
だったら、VOICEROIDを使ってみようと、一念発起してみたわけなんだ……。

どの声が実際に合うかは、サンプル声だけでは今一つわからないので、最初、お試し版をダウンロード。あれこれいじってみて、私でもある程度、形にできるかもしれないなと、3日目くらいに購入を決めた。
VOICEROIDの中でも最新版A.I.Voiceの声を4人──
結月ゆかり、日ノ出賢、伊織弓鶴、風見壮一
それからVOICEROID2(前のヴァージョン)の紲星あかりを購入。

なぜ何種も購入したかというと、地の文の目線が狭霧にあったりと男子の時には男性声、地の文の目線が白雪だったりと女子の場合は女性声にしたいな……と。
それであれこれ調声しても、私がイメージしている猫目坊の声はどうやっても出せないみたいなんだが。
(今まで実在の声優さんの声で一番、近いかも! と思えたのは刀剣乱舞の青江です。)

遠野怜士朗の声はかなりイメージ通りに調声できた。
怜士朗さんの日記や手紙の章を作るのが楽しみだな。

そんな感じで序章から初めて、試行錯誤を繰り返し、なるべく自然に発音してくれるように調整(調声)をしつづけ、とりあえずできた冒頭が、今回アップロードしたものである。

なお当ブログは音声ファイルを一度に5MBしかアップロードできないので、暫定的に、音質を最高品質より少し下げています。
この量で6分11秒というと、『黒猫ギムナジウム』全編全部で16時間ほどのオーディオブックになるはず。

ここまで作るのにみっちり2週間。
単語一つ一つは手を入れなくても結構きれいに発音してくれ、難読漢字も結構な数を訂正いらずで読んでくれる。
だが、デフォルトそのままで長文を読んでもらうと、とたんにロボ色がすごい。

ロボ色というとイントネーションが平坦なイメージがあるかもしれないですが、VOICEROIDは、むしろ過度に強弱をつけ気味。
息切れ気味に切れぎれに息継ぎを挟んできて、なめらかさを欠く傾向が強いんですね。

息継ぎの時間や回数を調整しつつ、声質の調声のみならず、アクセント(イントネーション)、声の高さ、話の速さ、抑揚などを一つ一つ調整する。

アクセントを正し、VOICEROIDが読めない言葉を単語登録するだけで、一気に聞きやすさの精度があがるのだが、そこから……より自然に、VOICEROIDの朗読だと気づかないくらいにしたい、
というところまで目指すと、かぎりなく時間が消えていくの……。

あまりに一定の速度だとロボ色が出る。
ずうっと一定の声の高さであってもやはりロボ色がにじみ出てくる。
抑揚の範囲が一定だと飽きもすぐ来る。
ばれない程度にゆらぎの強弱を滑らかにつけていくのが、やたらと時間を食うのである。

あと、どんなに調整しても、滑舌がダメだなんだなこれはという単語とか文章もまれにあります。

またトリッキーなのが、簡易慣用字体と印刷標準字体。
本来なら正しい印刷標準字体を、VOICEROIDはきちんと認識しないのだ。
つまりたとえば、ネット上などで便宜上よく使われている「掻く」
これは簡易慣用字体で、右上が又になってますよね。
印刷標準字体は右側が蚤(のみ)という字です。
蚤がつくから手で「搔く」というわけだ。
この「搔」とかをVOICEROIDは把握できない。

当然、私は印刷用に作っているので、印刷標準字体を用いている。

いちおう読むんですよ、VOICEROID。
その単語自体を間違って読むとか発音しないとかではないんです。
ただ、その単語を使っているフレーズを調整したあと、更新が一切できない。
正確に言うと更新登録はできる。しかし反映されないんです。
どんなにアクセントの位置や息継ぎの回数を訂正し、登録しても、デフォのロボ色イントネーションに戻る。

何度やっても特定のフレーズの調整部分が更新できず、おかしい……。
ほかの文は問題なくできるんだから、故障じゃないはず……おかしい……。
本当に困りまして、試行錯誤の上に気づいた。
漢字を簡易慣用字体に直して無事に更新できた。
この仕様については、どこにも注意書きが無いと思う。
ある種のバグなのではと疑っている。他の人が困らないように、ひとまずここに明記しておきたい。

そんなこんなで怜士朗さんの手紙文の所になど、このペースで、いつたどり着けるのか。
毎日、ほかの作業をせずに根詰めてやったとして、単純計算で仕上げるのに1年と数か月、掛かるっぽい。それはさすがにまずい。そんなにぶっ通しで続けてやれない。
仕上がっていく達成感というのはあるが、楽しい作業でもなくて……。

最初のうちは一番てこずるから、もう少しスピードアップできるとは思いますけど……。
付録は別なのを考えたほうが良いだろうな……。

気が向いた合間に、時間が空いた時に、ちょくちょくやり続けていれば、いつか必ず仕上がるはず。
地道に少しずつアップロードして、進捗をお伝えできればと。

気長に応援していただけると嬉しいです。
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『黒猫ギムナジウム』朗読 序章冒頭部分
(A.I.Voice日ノ出賢を調声)


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