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不滅のあなたへ・第三話 [は行]

第一話の良さ、まごうことなき名作の息吹を感じたあの感動はいったん忘れよう。

忘れたふりをして見ていたら、意外にこれが面白かった、第三話。
『もののけ姫』とか、『WOLF'S RAIN(ウルフズ・レイン)』とかそういう類である。

──こんなチートがあるか……こんなチートがあってたまるか……。
第一話のひたすらリアル寄りの描写を突き詰めていた、骨のある、丁寧な世界観の構築はなんだった。ファンタジー要素があっても地に足の着いた、丹念な描写で物語を紡いでくれたあのスタンスはどこにいった……。
良い意味で期待を裏切ってくれる作品は大好きだが、いくら何でもこれはもはや別物が過ぎる。
これは……ひょっとして原作時点で、第一話のあの良さを理解できない愚かな編集部とかが、
「もっと派手さが欲しいんですよねぇ~」
みたいな路線変更を強要したんでは? 
作者にとって不本意なテコ入れが入ったんでしょ? そうでしょ……?

──という勝手な疑念が、頻繁に頭をもたげてはきましたが、それもアニメーションの良さで、しのげました。

白い狼が巨大な化物(熊)に対して、獰猛かつスタイリッシュな戦いを仕掛ける。
あ、私こういうの好き……。
なんとなく目先の良さにつられて、最後まであっという間に見終えていた。
第一話とは正反対、何もかもがこんなにうまく運んでたまるかというほどの御都合主義で、ひとまずは、めでたし・めでたし……。

第一話、一面真っ白な世界でふと見えた道標に気を殺がれた一瞬の隙に、氷の下にあった川へと足を踏み外す。その際に脚に怪我を負い、その傷の出血が止まらなくて……というリアルで過酷な展開だったのが嘘のよう。
ファンタジー要素がファンタジーな展開をするのは全く申し分ない、それどころか楽しみの一つなのだが、そういう部分ではなく、
あの高さの崖から普通の成人女性が落っこちて無傷なんですか? そうですか、へーえ。

ツンドラ地方からタイガ地方に移動してきて、洋ナシっぽい果物が取れるのはわかる。
しかしだ、ドラゴンフルーツめいたものも転がってくる。
ドラゴンフルーツは南国、熱帯雨林の果物……。
ニナンナの村人はどことなくアイヌ民族を彷彿とする衣装を着ていたけれども、同時にアステカ・マヤ・インカ文明の色も濃く、実際かなり薄着で夏場仕様。
特定の民族をモデルにすると色々と誤解を招くかもしれないので、これは意図的に混ぜているのだろうし、このごった煮ちぐはぐ具合はファンタジー設定なので、突き詰めるだけ野暮。
しかしだ、第一話はファンタジーであっても、きちんとリアルを感じられた。

第一話の冒頭時点で、「それ」が意識や感覚を獲得し、体感温度等の快・不快を感知することは言明されている。第二話、第三話と、みんな割と薄着なところに、ツンドラ仕様の身支度では厚着が過ぎるはずなのだ。
相当暑いはずなのに……「それ」が何を感じているのか伝わってこない……何も。

そのあたり、原作漫画を読めばすっきりする設定になっているのかな……。

『刀剣乱舞/活撃』のアニメの時も私は、刀剣男士の出陣先での戦闘時以外の身なりについて、時代に全然溶け込んでいないのに周囲が一切スルーな旨を、終始、気にしていた記憶があるので、単に私が気になるポイントに過ぎないのかもしれない。

思えば『シュタインズ・ゲート』でも、真夏の秋葉原の炎天下を歩いている岡りんも、クリスも、なぜそんなに厚着で居られるんだ……と気になって仕方がなかった。私は夏でも相当の厚着マンだが、その私が見ても……大丈夫なのか、熱中症にならないか?
冷房がキンキンに効きすぎた部屋に居すぎて、体の芯まで冷え切ってんのかな……と、たびたび気になったものだった。


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不滅のあなたへ・第二話 [は行]

この回から宇多田ヒカルの主題歌はエンディングではなく、オープニングとして流れるんですね。

本来ならばいい感じのOPアニメーションなのだろうが、第一話のエンディングの印象があまりにも良かったので、俄然ガチャガチャとうるさく感じるのが正直な印象です。
内容もそう。第二話タイトルが「おとなしくない少女」なのだから、少女がうるさいのは承知の上とはいえ、話の展開がうるさい……。おとなしくない以上に声もうるさい……。

いやその前に一つ良いですか。
そもそもさ、狼の姿の時だって下(しも)は垂れ流してなかったのに、どうして人間の姿を獲得したら「それは人間たらしめるものを何も持っていないためすべて垂れ流し」になるんだよ、おかしいだろ……。
かなりきちんとした服をちゃんと身につけている時点で「人間たらしめるもの」を少なくとも一つは持っている。
(二足歩行も問題なくしているしな……)
大体、飲まず食わずで歩き続けてきているんだから、もよおしもしないはずじゃん……。

あまりにも初回が良かったがために、その感動が冷めやらないところにきて全然違う世界観の空間に連れてこられ、てんで気持ちがついていけない。
第一話はあの少年に感情移入をせずにいられない話の構成で、まんまと感情移入をしていた私は、気持ちのやり場に途方に暮れている感じ。でも慣れていこう……としているところにきて、追い打ちをかけるように新たな風俗(風紀習俗)でまくしたてられる。それが初回とあまりにも隔絶した世界観で。
(え、もう果物に? たどり着けちゃうの……?)
もう「それ」さんよ、とっととなんかの感情やら姿やらを獲得して、はやくこんなところ抜け出そうぜ。次の世界観に連れてってくれよ……
という気分になっている。
だって第二話はけっこうよくある展開で、手塚治虫漫画の時代から何度も見たことあるよこういうの、という風習の寄せ集めだし、語りつくされた定番をわちゃわちゃした味付けにしている。
人体が復元されていく作画とかはすごい。アニメーション的な見せ場はちゃんとあります。

当初、わたしは「それ」を無知で無垢・真っ白な霊魂的なものの具現化だと思っていたし、そういう要素はれっきとしてあるのですが、もうちょっと映画「ターミネーター2」の液体金属型ターミネーターに近い性質なのやもしれない……のか……?

なお、第一話については私は気に入りすぎて、既に何回か見ている。
派手さは無いが、何回見ても全く飽きがこないもんだから、つい。
初見では気付けなかったほどの微妙な人体の動かし方などまで、実に見事で。
怪我を負ってからわずかに足を引きずって歩くようになる独特の重力感とか。
むろんベッドから抜け出て椅子に腰かけるときの、やっとこさ具合や。
人体だけでなく、釣り上げた魚(鮭?)を壁際のロープに引っ掛けるときに、鮭がグんっと下にロープを引っ張る、その質感から伝わる重量感も……。
アニメーションの細部にまで、作り手と登場人物双方の息遣いがこもっていて、いちいち素晴らしいから、飽きもせずに繰り返し見たくなります。あと何回かは確実に見る。

一話がシンプルで真っ直ぐ、真っ向勝負ができるだけの内容と展開だったがゆえに、二話でおそらくはこういう感じを覚えるだろうなあというのは予期していた。その想定の範囲内なので、第三話以降も見ていきます。


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不滅のあなたへ・第一話 [は行]

2021年春アニメ、あれやこれやを楽しみにしつつ視聴をし始めたところである。

2021年冬アニメは『はたらく細胞BLACK』くらいしか見ていなかった気がするので、今期は視聴で忙しいよ、である。そろそろ色々と第一話が出そろってきたタイミング。
とりあえず現時点で一番猛烈に良いのが『不滅のあなたへ』です。
とても推したい。

●不滅のあなたへ(配信情報)
https://anime-fumetsunoanatae.com/vod/?l=ja

ちなみにエンディング曲は宇多田ヒカル。

私が「見てみるとすっか……」と思ったきっかけは主題歌が宇多田ヒカルだとだけは知っていたからなのだが、エンディング曲なんか些末なことかも、
と思えるほど、中身が良くて嬉しい誤算なのだった。
地上波放送はNHK Eテレ月曜夜10:50分から。

前情報を一切入れずに見たので、しょっぱな津田健次郎のナレーションが非常にゆっくりモードで始まる時点で心が萎えかけ、なかなか人間も出てこないし……。
1.3倍速に切り替えて見だした。
寒々しい風景に、いくらイケボの津田健でもあまりにゆっくりナレーションだから、しびれを切らした。
1.3倍速で「ごく普通の速度」と感じるので、本当にスローなナレーションで始まるのだが、そこで見るのをやめないでほしい。
……というかその数分で視聴をやめなくて本当に良かったよ、私自身。

見ていてリアルな冷たい風を感じる気がする描写。
いきいきして魅力的なキャラ(現時点では登場人物ほぼ一名+一匹)だけがおりなす第一話。
良質な短編映画を見たような内容の濃さで、ダークホースの圧勝です。
「原作よりもアニメのほうが良い作品なんてごくわずか一握り」
と先日ここに書いたばかりなのだし、事実そう思っているのは変わらないのだが、
この『不滅のあなたへ』は、そのごくわずかな一握りに入るんじゃないか、
と俄然、期待せずにはいられない。
別にすごいクオリティたっけー作画というわけでもないかもなんだが、人物が動くときの重心のかけかたが良くて、総じてアニメーション全般のつくりが誠実。その背後にちらちらと透ける、原作の良さ。
……多分だけど、このアニメ、原作に相当忠実に作っている。だからこその良さもあるよね?

とはいえ一切の前情報を入れていない、原作を知りもしない状態なので、今後どんなつまらぬ展開になるのかだってわからないのだが、たとえどんな展開になったとしても、この初回だけで既に名作の気配が。
ほんわり、かわいい絵柄で淡々と進むのに、着々と迫る悲劇的な予感。
──これぜったい……この少年が……んで……この狼が……だよね……?

狼がしょっぱな少年の家に入って「口がきけたならここにずっと居たいと言っただろう」的なことを思うんだが、(津田健がそうナレーションする)それは見ている私としても完全に同意で。
もうさ……この、サーミ民族がモデルになっているのかな?……と思わせる少年と、狼だけで、他のキャラとか要らないからさ……。このまま折々の苦難はありつつも、なんだかんだでうまくいってくれ……と祈るように見守るのだ。

派手な演出は一切ないけれど飽きさせないリアル寄りの描写が、美しくも過酷かつ素朴な世界で展開して、正直、続きを見て幻滅したくない、この一話で充分かも……
という気持ちにすらなった。


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