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醜形恐怖 (フォビア) [さ行]

醜系恐怖っていう病気があります。恐怖症(フォビア)の一種です。

まず言っておくと私は医者じゃないし、醜系恐怖を患った経験もないので、この発言により面倒が生じたらすぐに記事を削除します。

さて、あまり認識されていないようだが一般論だよの話をすると、今回世界的スターであるマイケル・ジャクソンが亡くなって、彼の整形癖……というの? あれを「あの人は白人になりたかったんだねえ」とコメントする人がけっこう多くて(以前から彼を「白人になりたかったんだね」と言う人は日本に多いんだけど)、んでもってそれをアメリカの人種社会のなんちゃらに結びつける発言が多い気がするのですけれども。

たぶん間違いなく、マイケル・ジャクソンは醜系恐怖という精神的な病気です。知る人ぞ知る、といった感じで。

醜系恐怖ってのは、ググればすぐ出てくると思いますが、自分を過度に醜いと思い込む心の病で、これがたいてい、比較的、どっちかっていうとはっきりいって見た目いいよね? という人に限ってなりがちです。美しい人は美しさをつきつめるとたまにベクトルを間違えちゃうね、くらいの呑気な捉えかたをされたりもするが、実際は、場合によっては、かなり深刻な病気だったりします。

で、この醜系恐怖にかかっている人が、うっかり美容整形にいったん足を踏み込んだら泥沼、っていうか、ここも、そこも、あそこも、いやあっちもおかしい、まちがってる、醜い、どうしよう、って歯止めがきかなくなるので、こういう患者に美容整形手術は禁忌に近い行為になります。このへんを、美容整形外科医は手術前に見極めなくてはならないわけです。で、たぶん良心的な美容整形外科医はそこらへんをきちんと判断するはずです。あなた、美しいですよ。治す必要ないですよ。切ったり貼ったりしなくとも、ほかに手段があるんじゃないかなあ、と。

でもそうすると、自分で顔を治す、とかいって自前のメスで(カッターとかでよ)なにかしでかしちゃう人とかも中には居るので、だったら美容外科医に、ちゃんとやってもらおっか、ってことになるのかもしれないけど。

場合によっては、患者&顧客からお金をむしることしか考えていない医者も居る。あるいは醜系恐怖について無頓着で知識のない藪医者とか、また医者当人が醜系恐怖で(醜系恐怖ってのは自分を醜いと思う病気で、醜いものが嫌いっていうことではない)ビジネスだからではなく、率先して自分自身にあちこち手を入れているようなひとだったりすると、どんどん「治す」。

それどころか患者の症状を煽って「ここも手を入れたほうがよくなります」「そこも醜いですよ」って、悪徳エステまがいの真似をしてお金をむしる(……エステは良いところですよ。美しくなる努力を応援してくれるスポーツジムみたいなものでしょう? 悪徳エステってのは文字どおり悪徳のエステで、エステが悪徳なわけじゃないですからね)。

いったん切ったり貼ったりの手を入れだすと、醜系恐怖の患者はどんどん病気を悪化させ、かくして治るどころかドツボにはまっていくことになります。

だから、醜系恐怖の患者で切った貼ったを過度に望む人に、お医者は
「いいの? あなたの場合、顔を『なおす』より、醜系恐怖を治さないと、いまにマイケル・ジャクソンみたいになっちゃうけど?」
と警告するのです。

そんな醜系恐怖のデフォルトとして語られるくらいだから、マイケル・ジャクソンは多分その病気だったと思われ。んで彼が醜系恐怖を患ったきっかけは、或いは人種問題でなにか感じたところがあったからかもしれない。ただマイキーが骨格を白人に近くしていったからといって、彼が白人へのコンプレックスがあったと直結させるのはいささか安易で、どちらかというならば醜系恐怖で整形を突き詰めすぎると、もう別人になるしかないので、だから黒人だった彼はどんどん見た目を白人化させていくしかなかった、と言えるんじゃないかと思うのです。

言ってみればマイキーの見た目は、白人化とも言えますが、女性化&中性化しているようにも見えます。(少なくともアメリカ人は、マイキーを白人化とは思わず、女性化・中性化していると見ていたように思う。)男性だった彼は自分の見た目を否定すると、女性化および中性化することになり、だけど彼は性転換手術をしていたわけではないですよね? あくまで見た目の完全自己削除。醜系恐怖を病んだ果ての、ああいった見た目のチョイスに思えるわけです。



=====追記======

美容整形外科そのものを否定する記事ではまったくありませんからね。
美容整形外科はすっごい重要な分野だと思っています。たとえば火事で大火傷を負った人とか、虐待で顔をむちゃくちゃにされちゃった人とか、事故で顔が原型をとどめなくなってしまった人とか、美容整形外科のお医者が居なくて、どうしろっていうんです。すごい分野の困難な職業だと尊敬していますから!

ところでマイケル・ジャクソンは、アメリカで人種も世代も問わずに本当に人気があって、みんなが彼の歌を好きなんだなーって実感したことがあります。もう既に彼の奇行やらが取りざたされていて、虐待容疑で逮捕されたり釈放されたりすったもんだあった後なのに、若い世代にも断然好かれていた。

州立のキャンパスってのは、ところどころでストリートライヴみたいに何かしらパフォーマンスをやってる人とかが居たりします。んでみんな基本素通り。アメリカのでかい州立の学生は、まあ雑多な集団なので、そういうのに対して寛大かつ無関心だったりします。

で、ある学生がちょっとへたくそなダンスをラジカセの曲にあわせて踊ってたのですが、その曲のラインナップが、マイケル・ジャクソンに変わったときに、
あ、マイキー、
マイキーの曲じゃんか、
ってにわかに周囲の学生が口々に声をあげて、振り向いていたのです。
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