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在庫破棄 [さ行]

先日は、徳間文芸三賞の授賞式に行ってきました。
日本SF大賞、日本SF新人賞、大藪春彦賞、の贈賞式です。
黒い服で出向きました。気分的な問題です。
いや、アクセはキラキラだし、
バッグは、薔薇がついてたりだったんだけど。お祝いなのだし。
ただ日本SF大賞の受賞者は、昨年3月に若くして亡くなってるし、
特別賞の大物受賞者も昨年5月に惜しまれて亡くなってるし、なんかなあ……なんだかなあ……と
クサクサと錯綜する感情を秘めつつで、行ってきたわけです。

受賞スピーチも遺族の方がなさるわけです。
御遺族のお話はもったいない、ありがたいに違いはありません。
ただ受賞作品についての思い入れとか、苦労話とか、逸話とかね、
当人から聞きたかったわけで、私はもったいないお話をうかがいたいわけではありませんでした。
なので、ものっそいどよーんとした顔をして、終始やさぐれな気分をひしひしとみなぎらせつつも、
ここは大人ですから、猛烈に混雑してる、でかい会場の壁にもたれて、
ウーロン茶やらオレンジジュースを静かに飲む。

それにしても、文筆業の人たちはヘビーな喫煙者ばっかり、いまどき本当に珍しい光景。
いたるところモクモクです。

で、立食パーティ。
昨年、うまい! と思ったカレーが……ん?
あんまり美味しくない。つか、おいしくない。むしろ、ま(……以下自粛)
わたしの味覚が変わったのか?
そこで昨年おいしかった、子羊の香草焼きに挑むと、おいしい!
ちょっとシェフを呼んでくださる。あなたいいお仕事なさる……みたいな気分になる、
舌鼓を打つ美味さであります。

あと美味しかったのは、舌平目のクレオパトラ焼とかいうやつ。
ほかの人が敬遠するように、遠巻きにされて行列が一切ない。
カレーとオムレツにすごい人だかりができているのにだ。
もしや皆さんタバコで味覚がおおざっぱになってるとか? 
カレーとオムレツは、ハズレがないからか。
たしかに海外で、この手の魚料理に迂闊にありつくと、たいてい死ぬほど泥臭くて、うっ……となる。
覚悟してもらってみたら、すっごいおいしかった。驚きのうまさだ。さすがここは日本だ魚料理万歳な。

ケーキ類は、クレープシュゼットと、あとやはり昨年同様、苺ショートがおいしかったのだが、
ケーキのうまさなのか、私が単に苺がすっごい好きだからなのか。
自信がなくて、苺ショートにいたっては二つ食べた。
うん、たぶんケーキがおいしいのだわ。

その後、化粧室にて萩尾先生とすれ違う。あっ! 
となったが、なんだか話しかけられなかった。
外で待ってようかなあとも思ったのだが、
化粧室の外でぴったりはりつくように待っているのも、失礼か。諦めながら、残念だった。
ポーの香水の件に関して、また作ってくださらないのか、うかがいたかったのだけれど。

会場で小谷真理さんをお見受けして、御挨拶。
そのときに「同年代の作家にワイワイ混じっていったら」
と、貴重なアドヴァイスをいただいた。
しかし私がパーティ会場で、根掘り葉掘り話をうかがいたかった同世代の作家は、
若くして死んじゃっているのでした。 
(あとSF界って女性の作家が同世代かけだし組に一切いない……。)

その折、最近の出版不況に関してお話をうかがった。
展望は、書籍のWEB化にあるらしいです。

そうなんですか……やはり私は浮かぬ返事をするしかありません。
紙で読んでもらいたいのは、だめなのか……。
WEBは、情報をゲットするのに非常に適した媒体なのだが、真に楽しむには不適切だと思っている。
ネット配信のアニメも映画も、わたしは結局、DVDレンタルか購入で見直すし、
ネットで読める青空文庫も、全部プリントアウトして読む。あるいは本を買う。
大英博物館とか、エルミタージュ美術館とかの電子展示品も、日本の古文書も。
こういうのがある、というのをチェックして、概ね把握するのには非常に役立つ。
けれども、鑑賞レベルの楽しみは、やっぱり実物でかなうように。
宝石は眺めるのもいいが、身につけなきゃ本来の意味が無いように。
本は本で読みたい。ページをめくりたい。
内容の情報だけ把握すればいい、たんなる情報源とは違うじゃないの、と。
Web化するなら、その読書の感触をそこなわない再現化に努めてほしい……と、切に願う。

みんなマンガは携帯で読まないでしょ、せめてパソコンでしょう。
と思ったら、携帯で見れるマンガもあるらしいな……。
じゃなにか、皆、わたしにケータイ小説を書けというのか?(←論理の飛躍・笑)

会場で、出版社の方にうかがった感じだと、出版不況なので本が出版社の倉庫をふさいでいて、
場所取りなので、新品本を破棄するサイクルが、順ぐりにかなり速くなってる様子です。
出版社の倉庫保有量にもよるが、かつては10年置いておいたって話もあるが。

面識はない、ある同世代の作家さんのブログでも、
初版本は、売れ行きがいいとかではなく、出版部数が少ないので……と、にごしてらっしゃった。
(その方なんか近年の直木賞受賞作家だから、謙遜してるなあと思ったものだ)
いろんな作家さんが、初版部数が少ないのでお早めに、と書いているのは、
売り切れちゃう以前に、すぐ買わないと、破棄処分になって出回らなくなるからもあったのです。

2008年9月に出版された私の「黒十字サナトリウム」、
有るのはいま市場に出回ってる分だけ。あとはすでに在庫なしです。
どうやら出版から一年半弱で、早々に在庫破棄処分の憂目にあったようです。

こういった実情をつきつけられると、本として紙媒体がいいのに……
と言っても、私の声など届かないか。
読みたいかたはダウンロードしてください、ダウンロードではお買い得価格で手に入ります、
と言うしかなくなる。だけど携帯ダウンロードに、私の作品はあきらかに不向き。
やはり適切な媒体で読めるWEB化の整備を、いっときもはやく望むより、道は無いのか……。

<補足情報・在庫状況>

2011年5月時点で、単行本の在庫は、私の把握している範囲では次のとおりです。
http://www.junkudo.co.jp/detail.jsp?ID=0219862597

   ネット上書店ではいずれも在庫がありませんが、
   丸善、ジュンク堂、MARUZEN&ジュンク堂書店では、
   次の書店にて在庫を確認。

    † ジュンク堂 盛岡店 3階 A-8 SF・ファンタジー
    † ジュンク堂 千日前店 1階-壁面C 日本SF小説
    † ジュンク堂 三宮駅前店 7階-38A 日本SF
    † ジュンク堂 姫路店 文芸書 16A 日本SF小説
    † ジュンク堂 那覇店 1階 文芸 4 日本SF小説

    取り寄せが可能。
    店舗より発送してくれるらしいので、直接、在庫のある店舗にお問い合わせを。
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