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思ったんだ [あ行]

海外ドラマのシャーロックが巷で流行ってるっぽいのは結構、前からですが、
わたしは映画(……ロバート・ダウニー・Jrがシャーロック・ホームズで、
ジュード・ロウがワトソン医師)ヴァージョンが好きなので、ふーん、と受け流していた。

シャーロックが、いろんな探偵ものの先駆けとして、金字塔なのはわかるけれども、
「だって名探偵ものならエラリー・クイーン作のドルリー・レーンが断然いかすよ! ダントツだよ!」
個人的にはそう思っている節もあります。小中学生時に読んだ以来なので、だいぶ忘れてますが。
ドルリー・レーン、今ハリウッドで映画化するならヴィゴ・モーテンセンに演じてもらいたい。

ウィキペディアに《エラリー・クイーンは後期シオドア・スタージョンが覆面作家をやっていた》
と載ってるので、
「エラリー・クイーンの世界観は、なんかすごい。
ドルリー・レーンってば、まじやばじゃん?」
……と小学高学年とか中学時代に、わたしが感じ入っていたのは、なるほど一貫性があったのだった。

(わたしはかつてSFJapanの新人賞受賞の言葉において、
シオドア・スタージョンが好き、と明言しております。あと萩尾望都と太宰治と、ブロンテの嵐が丘。)

海外ドラマのシャーロックは、
シャーロックの世界観を現代に焼き直してうまいことアレンジしてるので、
今さら感を払拭しつつ、往年のファンおよび新規ファンを揃って獲得している。
ではシャーロック・ホームズの内容がとりわけ際立って面白いかというと、
実際のところ、シャーロックとワトソンとの相棒としての掛け合いが、
バディものとしても成立し、
たとえ内容や犯人やトリックは知れていても、いつの時代も人気を博するわけですよね?
んでもって、探偵もののクラシックで、正統派色の強いあたりが。

だったら、日本でも往年のバディものの探偵を、現代版にアレンジしてテレビ放映すればいい。
子孫とかいう設定じゃなくて、思いっきり現代に焼き直して。
と、思い至ったのだが、
……日本においては、
引き立て役とかではなく、上司と部下などの上下関係にもなく、
対等に場を張って、たがいに助けあえる相棒がいる名探偵って、
そうそう、居ないのか……。
探偵してる合間に、ほんのり色恋に発展してもおかしくなさそうな男女とか、
もうこの人たち、恋のさやあての合間に探偵してるんだよなあ?
というタイプの男女コンビではなく、
あくまで気心の知れた男同士の相棒で、
しかし男同士だから容易には踏み込めない一定の緊張関係も維持しつつ、
しかもシャーロックとワトソンのような……みんな知ってる往年の推理小説の登場人物……。

江戸川乱歩作の名探偵、明智探偵と、怪人二十面相が組んでバディものやったらどうだ。
相反する二人がなぜ組んだのかは、各回を追って、難事件を解決していくつどに徐々に仄めかされ、
次第にエピソードを重ね、犯人を追いつめるごとに、明かされていくのだ。

みんなが知ってる明智探偵は、なぜか今、車イスで、足が悪いらしく、杖をついたりしていて、
以前のような活劇に向いた探偵業ができなくなっている。
なので、立場的には安楽椅子探偵。
現場に足を運ばないで、ほぼ家で推理をする。

で、現場に足を運んで、ごりごり探偵するのは二十面相がやるわけです。
怪盗が、どうして名探偵・明智君と組んでいるかというと、
どうやら明智君が脚を悪くしたのは、二十面相のせいらしいからだったりする。
怪人二十面相は明智君に助けられ、
……そう明智君は愚かにも二十面相を助けたせいで脚をやっちまって、
後遺症が。

二十面相は罪悪感から、明智君と組んでるわけです。
対等に競い、対等に犯罪ゲームを楽しみ、対等に挑みあうにあたって、
これでは俺のプライドが許さないのだ、
とかなんとか自分に理由づけして。ライバルに塩を送り、協力する。

二十面相ってたしか怪盗ですよね。人を傷つけたり殺したりしないのがモットーなのに、
肝腎の明智君を傷つけちゃった、ばかな俺様……と人一倍、後悔してみたかと思うと、
……馬鹿な明智が、あそこまでおっかけてくるからだよ、無茶しやがって……、
とか逡巡する。
そのへんの経緯は、足がしゅんしゅん動く時代の明智君との回想シーンが織りこまれ、
視聴者に、断片が明かされていくわけです。

では古典ミステリの焼き直しをするにあたり、
どの事件を焼き直すのか。
そこはそれ、二十面相が、
往年の衒学趣味な名探偵・キレッキレの法水麟太郎(小栗虫太郎作)とか、
ぼっさぼさの金田一耕助(横溝正史作)に扮して、
現場に脚を運んで、解決するわけです。
「二十面相」ゆえに。
扮装はお手の物だから。

法水も、金田一も、日本の往年の名探偵は、ぜーんぶ二十面相の扮装という設定。
明智探偵の頭脳とひらめき、二十面相の用意周到な罠で、
小栗虫太郎の推理小説の事件とか、
横溝の推理小説の事件とかを
現代に焼き直して、がんがん名推理していく。

いやちょっと待てよ、明智君は自分の相棒が元二十面相だと知ってんのか、どっちなの!
気付いていて、知らないふりしてるお人好しなの? と見せかけた腹黒?
"Keep your friends close but your enemies closer."
(友は身近に、敵はより手近に置いておけ)
とかいうモットーを壁に貼ってたりしてさ。
二十面相に復讐する機会をうかがうために、手元に置いて見張ってるのか……?
そう視聴者がやきもき、ヒヤヒヤするところもあり、
実際はもちろん最初から明智君は薄々、勘付いており、
シリーズ途中のある事件をきっかけに確信に至る。

しまった気付かれたと、姿を晦まそうとする怪人二十面相にむかって先手を打って、
「君は今後も僕の手足となって働きたまえ」
とか言って引き止めたりするんだ。
「僕がリハビリで回復するまでしばらくのあいだは杖の代わりだ」と。
リハビリ断念してたくせに。

江戸川乱歩は来年が死後50年で、
たぶん50年を節目に著作権が切れるので、
今後ひとしきり、メディアに色々、料理されるんじゃないかと。
リヴァイヴァル的な旬を迎えるかもしれない。
だから今から江戸川乱歩はメディアにとって狙い目なんじゃなかろうかと推測する。

小栗虫太郎は既に50年経ってるし。

しかし小栗虫太郎の書く事件とか、
横溝正史の描く事件って、
現代にそのまま焼き直しすると、
ちょっとアレな(……いろんなコードに抵触しそうな)難題が多いので、
そこは、クドカンが脚本にしたらいいと思うんだ。

クドカンはオリジナルよりも、アレンジがすごくお得意な感じがする。
オリジナルな脚本も、いろんなパロディがぎっしりだし。

監督とか演出は『ケイゾク』とか『TRICK』シリーズの、堤幸彦がやったら、
クドカンと堤幸彦のコンビは『池袋ウエストゲートパーク』で面白いのは立証済みだし、
視聴者はきっとすごく楽しめます。
おもに私がにやつきます。


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