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ゆく河の流れは絶えずして [や行]

NHKスペシャル大江戸第一集「世界最大!! サムライが築いた“水の都”
こちら楽しみにしていた。
http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2018086551SC000/?capid=nte001

オーストリアで発見された150年ほど前の写真を復元して、
世界最古の江戸の写真をカラー化、という、とてつもないドキワク感。
そのカラー化した写真に映っていた、当時の世界を目の当たりにできる、
という素晴らしさに息を呑んだのが、ほぼ数分。
55分番組のうち、当時のネガを現像した写真についてやっていたのは、たった5分ほど。

ネガから280枚もの江戸の光景が現像できて、
庶民の日常風景までほとんど余すところなく見ることができるのだ。
だったら、その280枚を、出来る範囲で、なるべくたくさん丁寧に、
見せてくれても良かったんじゃないのか……。
そのほうがよほど内容が濃く、情報量が多かったに違いないのに。

番組内で映った秋葉原や日本橋だけでなく、
一つ一つ、できるかぎり古地図などと照合して、
Aの写真は、現在ならこの辺。Bの写真は浮世絵だと、この辺等々、
詳細な解説を添えてくれるのかと期待していたのだが、違った。

結局のところ写真は番組のキャッチに過ぎず、
内容は、江戸の都市工学を讃え、日本人の地道な功績をたたえ、
有っても無くても良さそうな小芝居が、いちいち繰り広げられて、
(名のある俳優を、数分の映像に起用するのは贅沢だけれど)
大江戸をありがたがるばっかりなのであった。

写真をカラー化するまでは良いのだが、
CGで3D化すると途端に、
写真から感じられた埃っぽい空気感や、水の流れ、
ネガに焼きつけられた当時の生の一瞬が、見るも無惨に立ち消える。

当時のオーストリア人が既にこれほどの江戸の記録を撮って、本国に持ち帰っていて、
かたや日本が自分自身の姿を、きちんと記録できていないどころか、
まともに再現もできてないし……。
外国のほうが、日本の記録を正確に今も残している……という部分が確実にある。
そんな背景が透けて見えるにもかかわらず、
日本の観光PR番組を見せられている矛盾に、モヤモヤしっぱなしだった。

ところで最近、NHKの玉川上水推しが、如実ではありませんか(別に良いけどね)。
ブラタモリ「吉祥寺」を見たときも、内容はみっちり玉川上水についてであった。
江戸の都市計画は、水事情の都市計画とほぼ同意、
となれば玉川上水にスポットが当たるのは、無理もないのかな……。

現在の玉川上水は、周辺の植生や、生物をはぐくむ水場を提供する環境づくりのため、
かつまた遺跡の再現として、水が流れ、魚が棲むようになりましたが、
東京の都市を支える水ネットワークとしてのお役目は、とうの昔に終えている。
私が幼少の頃、少なくとも、小金井公園周辺の玉川上水の水は枯れていた。

きったならしい暗渠(あんきょ)に雑草がぼうぼう、枯れすすきがおびただしく、
雨のあとには、底に泥水にたまるから、
年長者が煮干しをつけて紐を長ーくたらし、アメリカザリガニを得意気に釣ってみせる。
それを興味津々かつ戦々恐々としながら眺めたことがある場所だった。
なんでアメリカザリガニが居たのかは知らないが、
ちょっとしたごみの不法投棄とか日常茶飯事の場所だったんじゃないか。

それが小金井公園で伊達家の門の写生会をしたくらいの小学生の頃だ(前のブログ参照)、
環境保全のため、清流復活と相成った。
在りし日を忍ばせる、キレイな水が流されるようになった。

だから、さも江戸時代から現代まで絶えることなく、
玉川上水が都市の水ネットワークを支えつづけて、
清らかに流れつづけてきたかのような印象をともなって語られると、
おやおや……? と思います。