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東尋坊にいってきた [た行]

先日、一泊突貫日程で、福井と石川(金沢)に行きました。
小松空港まで飛行機で、東京羽田から1時間。思いのほか近いです。

小松空港から車で小松駅まで十分弱。
(ここから連れと別行動で、連れはいったん永平寺へ。)
わたしは小松駅から、芦原(あわら)温泉駅まで。
一時間にほぼ一本のJR北陸本線・大阪方面に乗りました。乗車約30分。

芦原温泉駅についたら、一時間に一本のバスに乗り、東尋坊まで40分。

東尋坊の一個手前のバス停でおりて、沿岸崖沿いの遊歩道(?)を歩いて東尋坊へ。
快晴です。
40分ちかく歩きました。
真夏の炎天下を! ひとりで! 日傘と麦藁帽の両方装備で! 酔狂! わかってます!

麦藁帽をかぶっていれば日よけに日傘はいらないと思われるだろうが、
蜘蛛の巣とかね、あちこちぶら下がってるし、虫やらなにが降ってくるかわからない。
夏の薄手の服ですから、足長蜂が飛んできたり、イガイガの草にさわられたりしかねない用心に、盾として日傘は結果的に必須でした。
ときどきカニ歩きになる急こう配の遊歩道に、イナゴとか跳ねる。おぉっ……。

『夜9時以降は危険ですので立ち入らないでください』と看板が出ています。
なるほど、街灯なんてまったくないし、
海も日が沈めばまっ暗だろう。夜になったら暗闇の中を立往生。
潮騒をたよりに下手に歩けば海にまっさかさまでしょう。

だいじょうぶポカリスエットを持参してるし。
足首までのパンツをはいてるから変な虫とかに噛まれまい。靴もスニーカーではないが、これなら歩ける。たとえ蛇くらい出てきても、跨げるさ。

荷物が肩掛け鞄で、大きくて少々場違いだけれど。
サングラスも微妙に場違いだから、つるを胸元にひっかけて。
海沿いなので、さほど暑くはなかったです。むしろ心地よかった。
たまにうっすらと潮の空気がたちこめます。とにかく空気が澄んでます。

滝壺とかをわき見しつつ、鬱蒼とした茂みをくぐり、細い道を歩きます。
真夏はアスファルトの上を10分も歩けないヘタレですが、すたすた歩きました。
真っ昼間に、人っ子ひとり出くわさない。
大急ぎで進みました。正直ね、若干こわかった。

海の気配を感じつつも、海が見えない。
ひたすら、足場の踏み固められたちょっとした山道を進み、藪をぬけていくんですけど、
ところどころに東屋の休憩ポイントがあって、救われます。給水してまた進む。
なにしろ初めて来たので、ペース配分がわからない。
日差しにバテる前に、着かなくてはと焦ってました。
で、そんな途中に、ぱーっと海がひらける場所があるんです。
なんという蒼色!

きれー
まるで秘境の絶景ポイントだ……魂を洗われる心地がして、
写真をとりたい!!
だいたい絶景ポイントって観光客がごったがえしているのに、誰もいない。
チャァアンス!

と、周囲を見回すも、必ず看板があるんです。

『いまいちど考え直そう』
『いまならまだ引き返せる』
『思い出せ、親の顔、友の顔』
『まだやりなおせる』

……的な……常套句の数々……え? 

なに……ここ?

美しく息をのむほどきれいだなあと思う場所は、すべて恰好の自殺ポイントらしい。
おちおちカメラを取り出せない。
たしかに下は崖で、海にまっさかさまですが、足元30センチくらいの柵が手前にあり、
越えようとは思わないのだが……。

危機感をあおるのは、写真撮影を控えさせる腹でもあるのかなあと。

写真撮影できれいな景色をとることに夢中になっていると、たしかに墜落しうる場所なんです。
もうちょっと、と欲張りになって深入りすると、人知れず落ちかねない。
吸い込まれるように、海のほうに行きたくなっちゃうんですよ。
ずっと見えなかった綺麗な海が眼前に開けてて、マイナスイオンに誘われる。

それゆえ絶景ポイントには自殺防止看板が、もれなく立っているんじゃなかろうか。
たじろぎますからね。
自殺看板のあるところで、まごまごしながら荷物をほどいて、シャッターを切るのは気が進みません。

反面、ここで万一、人に突き落とされても、突発的な自殺ということで片づけられそう……。

私は今回、携帯で写真を撮っていた(重くなるからカメラを持ってこなかった)。
沿岸沿いの遊歩道(かるく山道)で遭難したら、
携帯で助けを呼ばなくてはならないだろう。

なにしろ誰とも行き会わない。カメラを使って、充電を浪費してる場合でもない。
というわけで道中の写真が一枚もないのだった。

ものめずらしい赤や紫の花とかもチラホラ咲いてて綺麗だったけど……。

たまに行き過ぎる人は、カメラをさげてトレッキングの身支度をととのえている。
でもたしかに『遊歩道』ってあったんですよ……。
人とすれ違うと安心しました。
ところどころで標識がでていて、東尋坊までの道のりを間違えてはいない。
東尋坊タワーは、なかなか近くならないが。
進むしかありません。

カナダのヴィクトリアに数か月滞在していた頃があったんですが、
ちょっと先に見える沿岸部をひとりで散歩して帰ったら、
最初のうちはウキウキと美しい景色に目を奪われるも、
最終的に2時間かかったことを思い出し……漠然と2時間を覚悟する。

友人とドイツに旅行にいったときは、古城ホテルにたどりつくまで裏山をぬけて、
小一時間登山をした……。思えばこういう謎なプチ遠征が多いな、わたし。
次の日、舗装された大通りで徒歩五分で来られたことを知ったんですが……。

そんなこんなで40分でたどり着いた東尋坊は絶景でした。
日本海というと、冬場の鉛色のイメージしか知らなかったけど、
夏の日本海は素晴らしい紺碧なんですね。
今まで、海外をふくめてけっこう海を見てきたけど、いちばんきれいな藍色だった。

おざなりに写真を撮って、
駐車場の案内をしていた、日焼けしきったおばあさんにバス停を尋ねるも、
怪訝そうな顔をされる。
バス停、降りたとこに戻ればいいんでは、なんだいなこの人は、どこから来たのだ、という目線。

「東尋坊まできて東尋坊見ないんで帰るんか?」
「いえ。ひとつ前のバス停からずーっと海沿いの遊歩道を歩いてきたんで、東尋坊はみっちりずっと」
「ほうか。なら、いらねーや」
「そうなんですー」
「そりゃあまあ、ずいぶん大変だったわ」
「そうなんです!」
「そこの商店街をぬけた下にあるから」
「タワーの向こうですか?」
「タワーより手前に商店街があるから、そこをぬけて色々みていったらいいさ」
「ありがとうございます!」

聞いたとおりに進んで無事バス停に着きました。
バス発車時間は30分ほど先だったので、おみやげ屋でぶらぶらして、
物産屋?……にてトイレがあったのでトイレにいき、
こういうところは概して……と、トイレの荒廃ぶりを覚悟して震えあがって入ったら、
思いのほか衛生的で、それまで目にしてきたきれいな景色がきれいなままで保たれ、助かった。

たしか14時18分着・21分発のバスだった。
15分にバス停に向かうと、まさに発車するところでした。
一時間にほぼ一本間隔のバスなので、客はみな待ちかねて乗りこむから、ぎりぎりまで待たないのかも。

ぽかんとしながら日傘を振ったら、停車してドアを開けてくれました。
乗客は私をふくめて3~4人。
多くは自家用車か、レンタカーで来るようです。

バスは運転手のほかに、女性の車掌さんが同乗していて、行き先を確認してくれました。
不慣れなものには、ありがたかった!
私が下りるのはJR北陸本線の芦原温泉駅ですが、
よく似た名前の芦原町駅という停留所が手前にあるのです。
車掌さんがいなければ、間違えて降りていたかもしれません。

滞在地は松任。金沢のちょい手前。
芦原温泉駅から北陸本線・金沢行で1時間弱です。
松任から金沢はアクセスがよくて、簡単にすぐ出られます。

金沢では武家屋敷跡と、
諸江屋という落雁(らくがん)のお店が味から雰囲気までぜんぶツボだったのだが、
数年前に働いていた研究室で、SSさんという年下女性が金沢に一人旅にいったあと、
「中里さん! 辻斬りが出そうなんですよ! 道を曲がると辻斬りが! 中里さん、たぶん絶対好きですよ!」
そう言ってくれたのは、ここ武家屋敷跡のことだな……。

なぜ私が辻斬り的な世界観を好きだと思ったんだろうか。
SSさん、いい勘してたな……。

東尋坊近辺にて
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(見知らぬ観光客を撮ってしまったのでそこだけ加工してます。)

武家屋敷跡
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諸江屋
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