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蛇足逸脱:進撃22話 [た行]

場所による放映時間のタイムラグのせいで、まだ未視聴の人もあるでしょうから、
できるかぎり、詳しくはネタバレしないように言うと、
私は、今回『進撃の巨人#22』におけるアニメオリジナルシーン追加に否定的です……。

すごく密度の濃い、過酷な展開が続いていたのに、
まさかの急転直下……いたずらなまでに鬱な展開の挿入。
感情移入したくても、それまでの設定と無理がありすぎて……。
尺の引き伸ばしだとしても、いくらなんでも……。

以下、少々ネタバレで語ります。


今回のアニメオリジナルシーンに関しては、逐一、猛烈に違和感があった。
原作の世界観がアニメに引き継がれていない違和感などという、生やさしいレベルではなく、
アニメはアニメ、原作は原作と、たとえ割り切って考えたとしても、
アニメ『進撃の巨人』でこれまで描いてきた世界観において、猛烈につじつまが合わないよ!
もっとも大きな違和感をあげるならば、

――壁外のあの状況下で、兵士たちの遺体回収なんぞしてられるはずがなかろうッ!!!

(生きているアルミンですら、馬をなくしてケガしたから現場にのこると……おいて行かれて死ぬ覚悟を決めたくらいの壁外遠征ですよ。たまたまクリスタが馬を見つけて通りがかったから、アルミンは助かった。)

――しかも回収した遺体を、ピンチになって荷馬車からごろんごろん捨てるとは!

――この調査兵団、おろかすぎだろ、統率とれてなさすぎだよ。

――調査兵団としての覚悟も自覚もなさすぎだよ。

――作品の世界観の一貫性に狂いが出まくっているではないか。

21話でリヴァイ兵長が、リヴァイ班の兵士たちの無残な遺体を見下ろした……
あの一瞬が最後の別離なんだ。
回収なんかできっこなく、生きているものだけが生きて帰るだけで必死な状況で。
そのあっけない苛酷さが調査兵団にたくされた使命で、だからこそ、かっこよく胸を打つのに。

なんなんだ今日のアニメの調査兵団……。

もっと言えば!
漫画原作では、壁内に引き上げる折、負傷者が荷馬車に乗せられています。
で、エレンも荷馬車で目が覚めます。
ミカサは馬上です。
エレンの荷馬車に併走しているんですよね。エレンが心配なあまりに。
(壁内に入ってからはミカサは馬を降り、馬を引いて徒歩で荷馬車の脇にいる。)
自分のマントをエレンに掛けてね。

で、意識が戻ったエレンは己の状況と、兵団の疲弊具合と、
またしてもミカサに助けられた事実に愕然とするわけですが。
(本当はエレンが助かったのは兵長の尽力が大きいんですがね。)

「調査兵団かっけーよ! あんなにぼろぼろになっても……戦い続けてるなんて!」
そんな感じの無邪気な声援を、がきんちょに向けられて、
エレンはやるせなさと、己の不甲斐なさに泣きます。
かつてあどけなかった子供時代の自分と重なり、寝かされたままのかっこうで、片腕で顔を隠して泣くわけです。
(このシーン、すごく痺れる良い場面です。)

アニメ#22では。
荷馬車にミカサも乗っていて(無傷なのに)、泣いているエレンの手をやさしく握りしめたりして、
……ここ兵団ですよね?
きみら、仕事中ですよね? 
なんでミカサが荷馬車に同乗していられるんですか。
エレンの馴染みだからといって、そんな勝手は許されないよう。
いつから調査兵団は、遠征現場で生ぬるい家族ごっこをしていい場所になったんだ。
いまやエレンは危機を脱して、危篤状態とかじゃないんですし。消耗してるけど、命に別状無いんだし。

言いたかないですが、敗残兵の行列です。公衆の面前で、幌もない丸見えの荷馬車でいちゃいちゃ(……ってほどでもないけど……かいがいしく)、ミカサがエレンにひっついていていい状況ではありませんよ……。

『進撃の巨人』は、兵団の兵士たる行動が、現実離れしていないから面白いのに!
わりと硬派だから痛々しさが映えるのに。

原作では、ミカサがエレンの傍らに、かいがいしく居残るシーンは別にきちんと用意されている。
このあとエレンが巨人と対決して大活躍後、のびて地下室で寝かされているときに。
ミカサはエレンの傍で、見守っていたいのだと居残るシーンがあるのです。
いつも戦闘モード炸裂のミカサゆえに、実に印象的で良いのです。
だから荷馬車のシーンは既にやりすぎで、ミカサ鬱陶しいよのレベルが……。
エレンにミカサの手を振り払うだけの気力がないだけに……もはやエレンが気の毒になってくる。

しかしだ。
アニメは原作者の諫山先生が監修をしているはず。
とすると、この蛇足が、作者の望んだ本当の進撃の巨人のあるべきエピソードだったのかしら……。
だとすると私は進撃の世界観とか、作品のテーマとか、作者の美意識とかを全く理解できていなかったのだな……。

いままでは原作者が漫画で描き切れなかったところが、アニメで補足されている感があって、
視聴者&読者の私は、非常に満足だったのだが……。これこそが本意か……?

……もやもやしてたところ、諫山氏のブログにたどりついて、非常に腑に落ちました。

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/isayamahazime/8049608

原作者にとって今回の22話はギリギリの歩み寄りだったんだ、というのがブログからにじみ出てます……。

公式ブログがどこまで本音を語れるかは人によって差異もあるだろうけど、
原作者の正直な見解が垣間見られます。
私は『進撃の巨人』のアニメも漫画もどっちも好き。
アニメはひとまず録画を繰りかえし見た挙句、銀盤を予約して逐一そろえていっているし、漫画はアニメを見終えた後に復習して、いちいち読み直すほどです。だから、こういう両者の見解が垣間見られるのは、読者&視聴者体験として貴重です。

ああ……私はべつに見当はずれじゃなかったんだー……。
私は理解ある読者だったんだわー……的な、自画自賛に陥りそうでした。

諫山氏は非常にうまいコメントの仕方をなさってるので、
たぶん誰が見ても、
私の見方は間違いじゃなかった!
そう思えるように、誰をも否定せずに、自分の主張をしておられます。


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