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萩尾望都原画展 [最近のお気に入り]

行ってきました。
池袋西武デパート別館にて今日までやっています。
先日、夜に友人と行きました。大混雑ではないけれど、常時、訪れる人が引きもきらない。圧倒的に一人で来ている女性が多い。私も、友人と予定が合わなければ一人で行ったし、友人も私と都合が合わなければ一人でいったはずだから、つまりは一人でも絶対行くもん、池袋だなんて中途半端な場所でも、行くけどね、っていう感じの人が集まっていました。クリスマス商戦につられてデパートにやってきた、ふらっと立ち寄ったみたいな人は、見事に皆無です。だからデパートなんかでやらなきゃいいじゃん……。

原画展に来た人が、帰りにクリスマス商戦に参戦するかっていうと、あるかなあ(……それもかなりあやしい感が)。

ざっと思いだせるかぎりで、ポーやトーマやマージナル、11人いる! モザイクラセン、ゴールデンライラック、海のアリア、スターレッド、銀の三角、メッシュ、訪問者、半神、エッグスタンド、イグアナの娘、ローマへの道とかのバレエシリーズ、残神~、バルバラ異界、柳の木、現在新連載中のスフィンクスの原画もありました(順不同)。

ただし、佳作の短編で、私の好きな「金曜の夜の集会」とか「月蝕」とか、SFでもありダークファンタジーでもあるタイプの欧米の香りただよう小作品の数々が、一切無かったとおもう。

「トーマの心臓」のイメージ作りの参考とした天使のオーナメントとか、先生の私物も展示してあった。ユリスモールって聖堂の天使みたいな顔してる、っていう台詞のイメージは、ここから生まれたのかなあ。……っていう血が混じった顔立ちの、クリスマスツリーに飾るような小さいオーナメントに、ひそやかに感動。

原画は印象として、どれもキレイでした。
古い漫画は、もっとホワイトとかで汚いかと思ったが、かなりそのままな感じ。(私はほかの漫画家の原画展とかに盛んに行ったりしてないので、単なるイメージの問題、判断基準は無い。)マージナルの前半が二色刷りだったのは知らなかった。

扉絵の原画は、絵だけで完成されている感が強かった。通常、扉絵ってタイトルが入っていない状態だと、スカスカで物足りない。萩尾先生のは、タイトルが入らない状態のほうが、余白に余韻がつたわってくる感じがした。

表紙絵については、私くらいの大雑把な感覚だと、原画も、実際の表紙も、そのままだーって印象。
カラー原稿については、相当に色が違って出るんだなあと実感。

私の「黒十字サナトリウム」の表紙を描いてくださった、笠井あゆみ先生も、黒十字のカバー絵は本当はもっと濃い色、ことに背景のブルーはかなりダークな風合いで描いた。だが、あがってきたトーンは明るめだった、とメールをくださった。色合いって印刷屋の胸三寸なのかも。写真とかも現像を頼むところが異なると、現像側のセンス次第で同じ写真でも明るみが全然ちがったりする、あれです。

ポーの一族は、原画を見ると圧倒的にアランが好きだった。
読んでいるときも確かにアランが好きだった。だけど物語から離れて思い起こすと、あんまり「アランが!」ってならない。エドガーとメリーベル、エドガーとアラン。エドガーを軸に、アランは二人セットの人数あわせの一人みたいな薄い印象。なんでだろう……。アランはかわいいし、アラン目線の話もあるし、アランは、たぶんエドガーに反発できる唯一の相手。読んでいる間は、目につくたび、えらい気に掛かる。

たぶんアランは、エドガーあってのアランだから、(またメリーベルもエドガーあってのメリーベル)物語を牛耳る力において、やや頼りなく、はかないのかもなあ……。

さてそんな原画展で残念だったのは、オリジナル香水の売り切れですよ!
どうやら、初日に売り切れたらしい。300本しかつくらなかったとか、一本7000円ちかくしたとか、詳しいことは知らないが、ポーの一族をイメージしたバラの香水って、そりゃ手に入るものならば欲しいよ! 

だって、エドガーやアランが紅茶に落として飲んでたエッセンスよ? バラのエッセンスを紅茶に落として飲むたび、エドガーはメリーベルを思い出すんだよ。それをアランは黙ってみてるしかない、かぐわしくも哀しいあのエッセンスです。萩尾先生監修のオリジナル香水ですよ。あの香りはどんなだったんだ!? ……ってみんなの長年のロマンであり、なぞめいていた代物で、即日売り切れるのあたりまえじゃないか。 

テオがキリアンに突き飛ばされた拍子に、エッセンスの入った香水壜が割れちゃう、そのせいでアランは、マチアスが温室で育ててたクリムソン・グローリーのバラを全部食べちゃうし。おかげでマチアスを優しくたぶらかすわ、それがばれてエドガーに叩かれるわ、そうともきみはメリーベルを愛してる愛してる愛してる愛してる! それぐらい最初っからちゃんと知ってる! ってアランがブチ切れて、教師から盗んだ懐中時計を沼地に捨てちゃうわ。なんだか大変な事態を誘うきっかけのすごい小道具、バラのエッセンスです。エドガーが記憶をなくしたとき、ふだんおっとりしたメリーベルがせっせと小細工して、お茶にしのばせ、飲ませてた。 

香り見本が置いてあったようだけど、私が行った時点ではそれすらなかった。売切れたなら、みんなのイメージどおりの香りだったんだきっと! 本とか画集とか売り出して積んであったけど、原画展に行くような者は本やら既に持っている。叢書があるけど愛蔵版も買っとこうかなあどうしよう、っていう感じの客なのだし、本なんて原画展に行かなくたって手に入る。ネットで買えば家まで送ってくれる。重いおもいしてべつに展示場で買わなくたっていい。万博の物産じゃないけど、正直、そこに行かなきゃ買えないものがほしいんだよ。

萩尾ファンの心理をちっともわかってないよ、と原画展のビジネス的な企画において、ひとしきり地味に憤慨したのだった。




入り口の写真を友人が携帯で撮影。
庵野監督からの花があったのは、正直おどろいたけど、考えてみれば意外でないかも。
ほかにもいっぱい花はあったが、気になったぶんだけ添付。銀河英雄伝の作者とか。

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