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la campanella [ら行]

新刊『コンチェルト†ダスト』に出てくる音楽第二弾。

『コンチェルト†ダスト』のころのピアノは、現代のピアノと構造がちがって、
今ほど音が大きく鳴らなかったりしたようなので、
今のピアノで、当時のピアノ演奏のイメージをするというのは、正確には誤りなわけだけれど、
現在のピアノを知らない時代においてのピアノとは、
現在私たちが知っているピアノと認識的にはさほどたがわないんじゃないか、という設定で考えてました。

ラ・カンパネラは有名なので曲名を見て、すぐ曲が浮かぶ方も多いはず。

http://youtu.be/tUt_QcUi0Eg
Shine (1996) Soundtrack La Campanella (Liszt)
~映画シャインより。
シャインはラフマニノフの音楽がメインテーマでしたが、ラ・カンパネラも、ちらっと出てきますよね。
この映画で私は「ん? これってピアノ曲だったの」と認識したのだった(笑)
(もとはヴァイオリン曲。)

朝日新聞のbeランキングでも、『もしもピアノが弾けたら弾いてみたい曲』
トップ10に入ってました。
このラ・カンパネラ、普通免許で高速を運転しているひとが、
F1レースを走りたいと言うようなスーパー難曲で、
ピアノで生活できる人以外、まず難しいんではないかしら。

ピアノをある程度やったことあると、
人前で弾いて人に聞かせるわけじゃなければ、
時間をかければ一定の自己満足レベルまでは、曲を仕上げられる。
一つの曲をしつこく丁寧に練習すれば、そこそこなんとか弾けるもんだ、
という自覚?驕り?……があったりするが、
ラ・カンパネラはまるで届かない。
指が! 

それだけでなくとも、楽譜を見て鍵盤と向き合った時に、
……あ、ごめん、まじ、ごめんて、ごめんって、弾けないから、
弾ける気がした私がまちがってたから、ほんと、ちょ、ゆるして、何考えてたんだろ私ー
分(ぶん)を知れよな……はい、
ってな徒労感に陥った遠い記憶があります。
全部とはいわずとも部分的には、まともに弾けると思ってた私が悪かった。

たとえば先日挙げたChopin: Etude Opus 10 No.4だったら、
試してみるまでもなく、聞いて想像がつきますが、
ラ・カンパネラは、無謀にもなんとなく弾けるんじゃないかってな気になる。
(だからこそ、弾いてみたいトップ10にも入ってるんだと!)

これはメロディーラインがクリアで、
鼻歌で音程をとって歌えちゃうからですよね、きっと。
おおお、まぎらわしい。

そんなみんなが大好きなラ・カンパネラ、いろんなピアニストが弾いています。
なかでも私は次の二人の演奏と解釈が好きです。

Paganini-Liszt La Campanella HQ

http://youtu.be/MD6xMyuZls0
Valentina Lisitsa演奏。
このピアニストは指が異様なほど小刻みに速く動く。
まさに超絶技巧。技術がずば抜けてすんごいのは耳目に一目瞭然で、そのぶん情緒に欠けて聞こえるきらいも……?

Ingrid Fujiko Hemming - La Campanella

http://youtu.be/xNzzF0M5hB0
フジコ・ヘミング演奏。
この人の手指って、一見ピアニストとは思えないといいますか、
『風の谷のナウシカ』の「こんな手でも姫様は働き者のいーい手だと言うてくださる」って感じの、じいの手みたい。
ゆったりとした弾き方も、情緒ある演奏と見せかけて、実は、たどたどしいだけなんじゃないかと見えるんですが、クライマックスの没入感と追い上げがすごい。
迫真に迫ってくる切迫感が命を削ってる感じで、打たれます。


コンチェルト・ダスト

コンチェルト・ダスト

  • 作者: 中里友香
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/09/20
  • メディア: 単行本