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文学フリマ東京35、ありがとうございました [黒十字療養所出版部]

文フリ東京35、昨日はありがとうございました。

新型コロナの感染状況が第八派に突入しつつあり、天気も雨もよいで(私としては紫外線ビシバシの晴天よりも怖くないのですが)、それでもはるばる足を運んで来てくれて、本当に嬉しかったです。

もちろん体調に懸念があって大事を取って、家で「文フリいいなあ」と思ってくれている人も、本当に、無理せず居てくれて良かったと思っています。文フリで体調が悪化したら辛いし悲しいし、嫌な思い出が付きまとうと怖くなっちゃうものだから、そういう時は用心するのも有り寄りのアリ。遠方すぎるとか、いろんな事情で来たくても来られない人だって勿論いるわけで、「行きたかったなあ」という気持ちを持ってくださるだけでも嬉しい。
12月からBOOTHで販売するので是非、利用してください。

私は今回は前回の誤算を鑑みて、11時40分に会場に着きました。11時50分からは出店者も一般客と同じ列に並んで入場しなければならない、しかもその時かなり並ぶ、ということを学んだので。なんとしても11時50分前に入りたかった。11時30分を目指していましたが、なんだかんだとカートの荷物が重い。道中、エレベーターに乗るために遠回りをしなくてはならない。浜松町あたりからは、いっぺんに乗り切れない人員が殺到するため、何度かエレベーターを見送らねばならなかったりで。路線情報を「ふつうよりゆっくり歩く」設定で検索しておくべきだったのかもしれない。

会場の建物内に入ってからの、会場すぐ手前の階段で、エスカレーターが動いているのに立ち入り禁止のテープが張られていた。階段を一段一段、重い手荷物カートを持ち上げて上がっていくのが、本当に厳しかった。なぜエスカレーターを使わせてもらえなかったのか……。

一段一段、進んでは荷物を置き……進んでは荷物を置き……。
踊り場のところで「持ちますよ」とスムーズに見知らぬ文フリ参加男性がカートを階段上まで上げてくれました。有難かった。

開場は12時。12時までに設営が間に合うだろうか……。

クロネコヤマトで送った荷物は無事に着いており、今回はその各エリアの荷物まとめ置き場から、一番離れたところに私のブースがあったので、小さい台車が役立ちました。こいつが無かったら今回の文フリを乗り切れなかった。
サンコープラスチック sanko plasticラクゴロ S [ベージュ]
台車自体が小さくて軽いからカートに難なく入ったし、付属の滑り止めを張り付けておくと安定感も抜群、相当の重量を乗せてもスムーズに動いて、使い勝手が良かったです。おススメ。私はヨドバシカメラの通販で買った。

12時ちょい過ぎくらいには今回は大体、本や商品を卓上に設置し終えました。

前回わたしが文フリに初参加した2020年11月秋は、開場とほぼ同時にずらっと混んだので、てんやわんや大パニックに陥ったんですが、今回は設営も済んでいたし、ぽつぽつとお客さんが見えて、時間的なゆとりがありました。以前よりは格段に落ち着いた対応をできたと思っています。それでも不慣れでありますが、短いながらも会話のキャッチボールを成立させられるだけの余裕があった。実りある体験ができて、楽しかったし嬉しかった。

(ちょい謎なのは、前回よりも文フリウェブページの「気になる」スイッチ数は倍以上押されていましたが、前回の半数くらいの人が来てくれた状況だったので、「気になる」スイッチ数は全然あてにはならんな……と。)

かえすがえすも、いらしてくれる読者の方々が本当に良い人ばかりで、いちいち例を挙げると或る種プライバシーに関わるのかなあとも思うから伏せますが、本当に私は恵まれているなあ……と。前回より数は多くはなかったけれど、そのへんは「どれくらい搬入したら妥当なのか読めないんだ」という別問題であって。本質的には一番実りある部分が得られたと感じています。

あとね、けっこう覚えているもので、私は人の顔と名前が一致しないことに定評があるが、顔と名前が一致しないだけであり、その人を良く覚えてはいる。あの時のこの方だ、というのは仮に10秒くらいのやり取りであっても、エピソードが付随すれば断然、心に残っています、いつまでも。
──この方は前回も真っ先にみえて、まだテーブルクロスもかけていないときに言葉少なにあっという間に買っていかれた?
──この方は前回、かくかくしかじかのコメントを手短に残していってくれたかたで? 
──この方は前回、私が長机を畳めなくて四苦八苦、右往左往しているときに、手を貸して、スムーズに机の脚を畳んでくれた人では……? 
等々。

手紙や葉書を渡してくれる方もおり、今この時代に手書きで文をしたためることの面倒くささをやってくれる、それも賀状のような定例句とは異なるのに、なんて得難いんだと。白雪と猫目坊のイラストを描いてきてくれた方も居て、封書を開けて二人の姿が目に飛び込んできたときに、ジン……と泣きかけた、感動して。

「好きです」という言葉は誰にとっても概して暴力的で、というのも相手に何かを要求する状況に多用されることが多いから、反射的に恐怖感や圧を覚える類の凶器になりかねない、下手をすると。すんなり咀嚼や吸収できる言葉とは限らない。それがために、用いるほうも受け止めるほうも緊張感を伴いがち。
これがひとたび「あなたの書く小説がとても好き」となると、たちまち生理食塩水の点滴並にすんなり抵抗なく、しみいる。怖くないどころか素直に「嬉しいです。有難うございます」とフランクに会話できちゃう、百パーセント励みになる魔法の言葉になるんだから、すごいですね。

3時過ぎに母親が来てくれました。
母親、2022年の年明けに肺腺癌と診断され、喫煙経験皆無なので青天の霹靂だったのですが、不幸中の幸いでステージ1のごく初期で、場所も取りやすい左下葉にあり、3月中旬に胸腔鏡手術を受け、無事に悪いところを取りました。
(その折に私は、母親の切除された下葉を実際に見せてもらいました……というか確認のために見せられたというか。もういっそ、と開き直って執刀医師の許可を取って写真に収めたら、「触りますよね?」と勧められたので、ラテックスフリーの手袋をはめて、けっこう大きい下葉を持ち上げ、その下葉の一部にある悪い部分を手で触り、切除した下葉に巣食っていた患部を確認した。)
母親、現在は普通に生活を送っています。術前は、検査につぐ検査で、ようやくステージの確定診断が下った時だったか、「……今年こそ文フリに行ってみたいと思ってたのに……」と。
「え? 私が本を並べて売ってるだけだけど……会場の雰囲気が文学に占められているという意味ではとても良い場所だし……じゃあ手術が済んで元気になったら来て」
と、約束していた。

最近では遠出を極力、避けたがる母親だし、最寄り駅へのアクセスが私の家よりやや悪いので、まず駅に出るまで疲れるのに、電車を乗り継いで1時間以上もかけて来られるのか……。モノレールなんて使い慣れてないし……本当に姿を現してくれる……?

「来てくれるなら、出店者側にきて隣に座って、一瞬でいいから、店番とかしてほしい。その間に私はトイレに行ったりとか、残部を自宅に送り返すための着払い伝票を、宅急便搬出受付まで取りに行ったりとかできる」と「出店者用カード」を渡してはいた。

母は「あんまりあてにしないで」と言っていたのですが、まったく平気の態で来てくれ、「通勤スイッチが入った。通勤していたときの」と。「モノレールは羽田から出張に行ったときに使ってるし」
「当時からモノレールってあったっけ?」
「あるよ。モノレールをなんだと思ってんの」
なんとなくモノレールとゆりかもめとを混同していた、私は。

私は鳥が大好きだけど……たぶんこれは閑古鳥……席を離れても差し支えのないタイミング。という頃合いで母親が来てくれたので、手荷物を見てくれているおかげで、あれやこれやの用事を前回よりは手際良くこなせて、搬出作業も困難を見ずに済み、5時過ぎに会場を後にしました。

この日が無事に済んで、本当に達成感がありました。
感謝です。