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『ダンケルク』の映画体験 [た行]

映画『ダンケルク』見てきたんだが、公開中の映画については無料放送などではないし、
一斉放送ともちがって時差もあるので、
古い映画以外は、映画の内容についてブログに書かないようにしている(今回も書かない)。

単に私個人の映画体験の部分だけについて書いておくと、
私はこのところ映画館で全く映画を見ていなかったので、
刺激の強さが尋常ではありませんで、
軽くシェルショックレベルに疲弊した。

must-see movieであることは確かなのだが、
見るならば体調万全な時にいったほうがよろしいかと。
心底、真面目に、そう感じました。

画面が揺れて酔うとかはありません。むしろ美しい。
血とか内臓とか派手なスプラッタも皆無。
しかし音が、えげつない。音響が。

心身ともに「今日なら余裕でいける」という日に一人で行きましたが、
消耗すること甚だしかった。

だいたい映画を見ると、しかも戦争映画などの場合はとくに、
残酷だろうと苛酷だろうと、泣きはらそうと不条理に歯噛みしようと、
アドレナリンが出るらしく(当社比)
皮肉にも元気まんたんになって映画館を去るというのが、私の常なのだ。
ダンケルクはしかし、そういう私に活力をもたらしてくれる映画では全くなかった。

勇気をもらうとか、悲劇に涙するとか、
怒りに震えるとか、ショックに打ちのめされるとか。
はたまた人間の愚かしさに嘆くとか、
そういう感情に火がともるタイプの映画でなかった。

嘔気と腹痛が波状攻撃で絶え間なく打ち寄せてくるような音響(音楽とも効果音ともつかぬ低音)と、
壮大で圧倒的な絶景(戦争映画にもかかわらず、陶然となるほどの景色)との、
このダブルバインドが、どんどん感情を殺しにくるんで。

クリストファー・ノーラン監督がCGを全く使わず、生映像にこだわって撮影したらしいですが、
おかげで臨場感が異常。
初めて見る光景なのに、なんかわかるこの感じ、
というリアルな追体験を否応なくさせられます。

しょっぱなズキュンという銃声でまず私、ビクッて身を竦めましたから、文字通りに。
そんなリアクションしてるの映画館で私だけでしたが。皆なぜ平気なんだ。猛者なのか。
(ちなみに映画館は、 空いている頃合いを見計らって行ったこともあるが、十人ほどしか居なかった。)

昨日ラスベガスで銃乱射事件があったばかり、その報道を見聞きしたばかりで、
頭上から銃声が降ってくると、
胃がすくむ……常に気が抜けない。

天国と地獄の立ち位置が、戦況の風向き、自然状況の潮目の変化で、
あっという間に入れ替わることの連続で、
(精神的な)窒息と過呼吸が交互にくる息苦しさ。
苛酷でした。

以下、忘備録的な小さなネタバレ。

戦争映画でよくある、気の利いたおしゃべりキャラなど一人もいない。
全体的に抑制が利いて、寡黙なシーンだらけ。
ひたすら硬派で、シビア。

そんな中で唯一といいますか、
とあるキャラクターが、
“Afternoon!” 
(Good Afternoonの略ですね。日本語字幕だと「やあ、どうも」となっていた。
私ならきっと「よろしく!」と訳すだろう。)

“Afternoon!” と、この局面でか! RAFすかしてるー!
無茶苦茶しびれました。