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童子切安綱@東博忘備録 [た行]

ちょうど一か月前になるのか、
国宝太刀・童子切安綱にまみえんがため東京上野の東博に赴いた。
近くで用事があったので遠回りして寄ってみた。2月7日木曜のことである。

ONLINEゲーム『刀剣乱舞』では、
新刀種「剣(つるぎ)」である白山吉光(はくさんよしみつ)がこのほど実装されましたね。
重傷回復機能というヒーリング力が搭載されていて、
……刀剣乱舞もやればできるんだ! 喜ばしいね!

神聖なルックスにひきかえ、口を開けば圧倒的なロボ色の白山吉光。
皆さん大いに面喰らったのでは(……少なくとも当初の私はかなり面喰らった)。
見た目の期待値と、中身とが正反対。きたかこのパターン、刀剣乱舞のお得意技。

一期一振が包容力ある「いちにい」であるところが補強された一面も見られ、とても嬉しい。
白山くん、粟田口で良かったね……。
粟田口一族じゃなかったら浮きまくって、当本丸にすんなり馴染めたかどうか、
ゲーム審神者の私は自信がなかったよ。

実は前々から薄々、感じているのは私だけじゃないだろうけど、
一期一振ってひょっとすると粟田口吉光と名がつくと、途端にものすごく盲目的、
ものすごくザル勘定になるんでは? 
もう粟田口なら誰であろうと何であっても受け入れますぞ、粟田口吉光唯一の太刀である兄として!
という姿勢がもろ見えで、流石のいちにいであった。

この白山吉光がやってくるとわかるまで、
刀剣乱舞・新刀剣実装というニュースに、
「お? ついに童子切安綱くるか。いやいやあるいは石田正宗」
と、ささやかれても居たわけだが、その両方が東博に展示されていたのである。
見に行かなくっちゃ、であった。

童子切安綱──天下五剣であり国宝でもある。
刀剣乱舞では、大包平が回想で名前を出してはっきりと言及するので、実装は確定済み。
今のところは未実装で、どんなルックスと戦闘力とキャラ設定で出てくるのかは全く謎です。

たとえもし「刀剣乱舞」でゲーム審神者をしていなかろうとも、
一介のゆるい刀好きとして、この刀は私は絶対に見ておきたい。
東博にあるからといって、いつ展示の機会が巡ってくるともしれないし、
……季節が夏だったら、私は悠長に出歩けない……。
ゲーム内で実装されてからでは、きっと混むよね……。
本日は体調も気候も好ましくある……と、その日、せっせと足を伸ばしたのだ。

たどりつくまでの通り道、上野の不忍池では、ポールにいちいちカモメが休んでいて、
白い胸羽がふっくりして風にそよがれていて、愛おしい……。
失礼ながら、カメラを向けさせていただいた……。

一瞬、え……! なっ? みたいな感じに、私に反応して、
飛び立とうか、様子見する鳥たちなんですが、すぐに、
あ、この人はただの鳥好きだ……。
あ、この距離感の丁寧な詰めかたは、ただの鳥好き……。

ピリッとしかけた鳥はおのおの居ずまいを元通りにすんなりゆるめ、
居るよね、こういうただの無害な鳥好き人間って……
と、私は生あたたかく流し見されて、近寄るのを黙認されるのであった。
あ、なんか幸せかも……と私は涙ぐんだ。まじめに。

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雀、鶺鴒(せきれい)や、鵜なども居ました。

東博に着いたのは午後4時半前だったか。
5時には閉まるので、お目当てに直行します。
以前はもっと遅くまでやっていた気がするんだけど……。
(と思ってチェックしてみたら、11月1日が例外的に21時までやっていた。)

お目当ての刀剣に直行する、その刀剣部屋にたどり着くまでの手前に、
見事な鞍が。

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巴模様の螺鈿(らでん)の出来栄え、美しさ、これが平安時代作な事といい、状態の良さといい、
重要文化財なのも納得の風格です。
どんな貴人が使っていたのか。それとも飾り物だったのかなあ。

で、刀剣。
童子切安綱は、かつて三日月宗近が展示されていた、
私が勝手に三日月の指定席と思っている区画に在った(と思う)。
2018年4月には大包平が展示されていた、その隣にあたるかと。

正面に来たとたん息を呑む経験は滅多にないですが
(……たとえば私は三日月宗近には、そこまでときめかなかったのであった、
多分に、裏側展示されていたせいだと思うんだが。)
童子切安綱は存在の傑物感が並大抵でなかった。

三日月宗近(天下五剣)のすらりとした優美さと、
大包平(国宝)の威風堂々振り、
その二物を兼ね備えている、まごうことなき逸品なのが、素人の私から見ても、一目瞭然でした。

堂々と立派でありつつ、美しい。 
白眉。……といってもその存在感においてであって、
色としては白刃というより、鋼の黒が勝っている印象だった。

比較対象が無いので、写真だと良さが映りにくいかもしれないんですが。
大振りな一振りをまるまる映すのですら、困難なので(ファインダーの枠に入りきらない)……。
それにしても今回は写真がうまく撮れていなかった……。
一応載せます。

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天下五剣でありつつ、かつまた国宝でもある童子切安綱が、
ゲーム内でどんな刀剣男士として実装されるのか。
ますます楽しみになってきました。

石田正宗は、先日、小龍景光が居たブースに在ったかと。
石田正宗を見るのは二度目です。
2015年春の大関ヶ原展で、
京都から骨喰藤四郎が、両国の江戸東京博物館に出張展示。
同時に、個人所有の蜻蛉切も同じ江戸博にやってきたときだったと思う。
石田正宗も来ていたのだ。
刀剣乱舞に実装されてもいないし、他にも数々の刀剣が展示されていたなか、
それでも石田正宗は鮮明に記憶に残っている。

刀の棟(刃ではなく背中側)に、二か所、大きな切込傷が入っていたからです。
物打ち(切っ先三寸の一番切れるところ)と、腰元(刀の反りが入る部分ですね)の部分。

当時、大関ヶ原展に行ったとき友人と、
「あっぶな~」
「ここで敵の刃を防いだのか、間一髪じゃん」
「しかも二回も! 打ち込まれて!」
と、言い合ったのを覚えている。
江戸博では、二か所の傷がよく見えるように展示されてもいた。

今回、屈みこんで見上げたら、その二か所の傷痕が目印となって目に飛びこんで、
……あ、いつぞやの! 君だな!

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そのほか、加州(清光ではない)や、
来国光の太刀なども。この来派の太刀は茎の生(うぶ)っぷりが超きれいで、目を引いた。

長船派の小太刀があって、地肌は長船特有の華やかさで大層きれいなのだが、
体格のバランスがホビットみたいで異色だった。

南北朝時代の青江の太刀もありました。
現在、丸亀城にある、にっかり青江を、わたしは生で見たことがないけれども、
青江派、ものものしい威圧感があって、ちょっと大陸を思わせる身幅の広い、大振りで。
なめらかに釉薬をかけたみたいな艶感のある刀なんですね。
凄味があった。
にっかり青江も、もとはといえば大太刀だったのを、
時代に合うように大脇差にすりあげられたんだっけ……。

ミュージアムショップに寄りましたら、2018年秋に京都で大々的に催された、
──特別展「京のかたな」匠のわざと雅のこころ──
この図録が平積みで置いてあり、
ラッキー! 

価格で言うと、そこそこのお値段ともいえるけど、
刀剣の百科事典のように使える感じですらあるので、かなりの割安感でした。
当時、行きたかったけど到底行けなかったので、
このたび飛びついて買ったわけですが、図録すなわち写真集ですので、
良い紙を使っていて、見た目以上に重い。
こういう本こそ通販で買いたい。
だが少なくとも私がチェックした限りでは、どこの通販でも入手不可だったのだ。
道中、持って帰るのが重たすぎて、そこは正直かなりこたえた。

(いずれの写真もクリックすると拡大します。)