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『コンチェルト・ダスト』新装電子版制作中② [黒十字療養所出版部]

『コンチェルト・ダスト』新装電子版制作中①の続き。

既にある本をKindle化するだけなのに、
そんなにやることってある?
と思われるだろうし、私自身も内心そう思っていたのだが、始めてみると、これが結構ある。

本当は「こうしたかった」のに、様々な事情からできなかったりした部分を、
なるべく当時、思い描いていた状態に、理想に近づけていこうとしている。
作品としての精度を上げる作業をしているので。

同作を知っている人なら、どこの部分を直しているかわかると思うが、
こんな箇所もチクチクと作り直しています。
チラ見せ。

Canvaであらかた作り、Windowsペイントで仕上げた。カーニングに気を配った。
MikahNameTagtrimmed.jpg

この部分は実際に単行本になってみてから、
「アルファベット名が横書きで見られる、図を挿入した状態で、見せれば良かったかもなあ」
と痛感したので。

ドラガン・ラクロワがMikahという猫の名前を、
「たしかミラァといったかな」
と、猫の首輪についていたペンダントスタイルの名札を目にしたときを思い起こして、発言する。

通常の縦書き表記の渦中に、アルファベットを混ぜて書くと、
わかりずらく、目線が上滑りしやすいんですよね。
(ミカとミラァじゃ、けっこう違うじゃん。ドラガって実は抜けてんの?)
と、思われかねない……。

実際は、ご覧のとおりで、KとRは書体によっては相当、似て見える。
(加えてドラガは実のところ出自がキリル文字文化圏でもあるからな……。)

こういうのは具体的に見せてわかってもらったほうが、
より作品の精度が上がって、より身近に引き寄せて味わってもらえるのではと。
私たちは日本語で暮らしている以上、
KとRが似ていて時として間違いやすいと、まず日々痛感して生活してはいないですよね。
アルファベットを多用していても昨今まず装飾体とかに触れはしないし、
タイピングなら、こういうミスはあまり起こらないですしね。

かといい、
「実際KとRは似て見えるものである」
というたぐいの文章を入れるのは避けたかった。
作品の内容を左右するほどの意味はないのだし、文章の流れがいたずらに妨げられるだけだから。
そこは実際に見て、感覚的に、なるほど間違えるかもなあ……確かに──。
と思ってもらったほうが、共感度(?)が高まるわけで、
そのためには、こちらのほうが一目瞭然だなあと。

むろん、この形式にしても、そうと気づかない人ならば、
まあ気付かなくても、仕方ない程度の些細な部分です。
(何度も言うが、本筋には差しさわりが無い。)
全ての人に一読でわかるように小説を書くことは、不可能だし、
親切な文章を書きすぎると、くどくなって鬱陶しい。それはもう小説ではなくて手引書になってしまうから。

ですので、まあこんな感じに、
当作品の初版の味わいを損なわないようにしつつ、
足さず、減らさず、
本来あるべき精度を高めて、補強していく作業をしています。


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