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連載第4回@note『隣の客はよく柿喰う客か?』 [黒十字療養所出版部]

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書き下ろし連載小説『隣の客はよく柿喰う客か?』

第4回目を配信開始しました。
https://note.com/blackcrosssanat_/n/n6ad0aa5b1d2a

第1回目→ https://note.com/blackcrosssanat_/n/n6f4cf32b6fc9
第2回目→https://note.com/blackcrosssanat_/n/n30a25319806e
第3回目→ https://note.com/blackcrosssanat_/n/nf58db4365abf

今回、作中で言及している昭和二十二年四月発行の二万五千分の一地形図【立川】と、昭和二十年修正版五万分の一地形図【青梅】は、国土交通省国土地理院のサイト(https://www.gsi.go.jp/MAP/HISTORY/koufu.html)から申請して、有料で地図の抄本を取り寄せたのでした。

作中で言及したのはこの二種ですが、他にもけっこう取り寄せて、当時の状態を把握するのに使いました。

私は、物語の舞台となる土地を確認して、世界観を構築したりするのに使いましたが、多くは自分の住んでいる土地が、かつてどんなだったか、あるいはこれから購入する土地がかつてどんなだったかを確認するのに使うのがメインな感じがする。あるいは研究用に。
ある意味、私も研究用・学習用と言えなくもない活用をしたともいえるかな。
まだインターネットエクスプローラーが現役だった頃のような記憶が……。

かつて沼地だったとか、もともと坂だったわけではなく盛土して坂にしたとか、そういう地盤が弱い場所を確認するのは大事ですよね。

なお、作中で、
→かつての軍都をしのばせる十町弱──立川市と銘うった一キロ四方がそっくり白抜きで、ここは陸軍飛行場や立川陸軍航空廠などが(中略)この真四角の土地は現在GHQに接収されている(以下略)

と書きました、その土地は今は一体どうなってんの?
というと、昭和記念公園になっている。
こういうのって意外に知らない。学校では教えてくれない。少なくとも私は自分で調べてみるまで知りませんでした。
立川には、たまに映画を見にいったりすることもあるのに。

なおこの「陸軍飛行場」という文字の並びを初めて見た時に、
(は? 空軍でなくて? 陸軍も飛行機を持ってたってこと?)
と私は混乱したんですが、第二次大戦当時、日本に空軍はないんですよね。陸軍航空部隊があるだけで。
じゃあ、ゼロ戦とかは? 
──あれは全部、陸軍飛行戦隊=陸軍航空部隊とかになる。
まあ……世界では航空母艦が主力のときに、日本は戦艦をせっせと増やしていたくらいだから……お空がお留守気味だったのか……
とも思ったが、海軍も建前上、陸軍の一部門であったらしい。

また、作中に登場する外来語辞典の中身。
あれは祖母亡きあと、私が遺品の書籍を入手した、その内容をベースに手を入れて書いています。もともとこれ系の本は生前から祖母は私にくれたのでしたが、この本の存在は知らなかった。
めぐりめぐって、私のところに本がきたとき、その本を手にしたときは、内心でガッツポーズした。
祖母のめぼしい金品は子供らにきちんと分配され、こんなガラクタを欲しい人なんて居る?
ああ、それ系のガラクタだったら友香が欲しがるんじゃない?
みたいな流れでゲットした感じで、
私は「物の価値のわからぬかたがたよ、ぬはははは!」と内心で狂喜乱舞した。
「おばあちゃんも友香が手にして喜ぶならそれが一番嬉しいだろうし、本としても本望だろう」みたいな綺麗な言い方をされた気もするが、「友香でもなければ、そんな古本はただのゴミなだけ」という周囲の理解があった(見向きもされてなかった)おかげである。

実際は単なる外来語辞典ではなくて、醫用外来語辞典であり、紙の薄い小冊子にびっちり小さく印字されている書籍です。全然医学用じゃないのでは、と思える言葉も載っていて、しかも全然現代にまで定着していない。
ネーベン(獨)とか。
副、手傳い(おめかけ)
と載っています。

ブルート・ドルック Blutdruck(獨)=血壓
血壓が読めなくてググりました。血圧です。

ちなみによく聞く眼病のトラコーマは、ラテン語なんだね……
そういうことがわかって本当に面白いです。

作為的に現代用に編集されている、誰かのフィルターを通した書籍ではなく、当時実際に使われていたものから世相を読み取ったり実態を推し量ったりしたい派としては、身近な人間が使っていたという事実も加味すると、本当にかけがえのない書物になるのです。